女の落書帖

アサギマダラという蝶がいる。名前の通り、羽の浅葱色(薄青色)が印象的な大型の蝶だ。美杉で見ることができると数年前に知ったのだが、今年初めて見に行くことができた。
アサギマダラはフジバカマなどキク科の花の蜜を好む。美杉町太郎生の人たちが世話をするフジバカマ畑で花が咲くと、アサギマダラがやってくるのだ。
晴天のその日、畑のフジバカマは一面に薄ピンクの花を咲かせていた。畑の中の散策路を行くと桜餅のような香りがした。アサギマダラは花の上を優雅に舞い、花に降りて蜜を吸った。
この蝶は渡りをすることが知られており、各地でマーキング活動が行われている。捕獲した蝶の羽に印をつけて放し、その蝶を発見した地点を記録する。その活動の結果、北海道から山口まで、福島から沖縄までなど、千キロメートルを軽く超えて移動していることが判明した。なんと台湾まで飛んだ蝶もいるそうだ。華奢な羽でどのように海を渡るのだろう。
蝶の成虫である期間は四五ヶ月。フジバカマ畑に滞在する日もあるだろうし、一日一キロメートルも移動する計算になる。海を渡る先の島の位置を知っていることも不思議。小さな体で途方もない冒険をしている。
太郎生のフジバカマは今月末ぐらいまで咲くらしい。冒険の旅の途中の蝶を見てやってほしい。    (舞)

テレビの出演者に文句をつけるのも何だかおこがましいけれど、近頃「させていただく」という表現が気になってしかたがない。使いすぎではないだろうか。
相手に許可を求める場合なら「させていただく」もありだが、自分の判断ですることにその表現を使われると違和感を覚える。「結婚させていただきます」「答弁させていただきます」など聞くと、どうぞご勝手にと言いたくなる。
丁寧に言っているつもりだろうが、しばしば不適切な敬語に聞こえる。「させていただく」より「いたします」を、「言わせていただく」より「申し上げます」を使った方が美しい。
敬語は本当に難しい。私もつい「拝見いたします」「お伺いいたします」など二重敬語を使ってしまう。「ご確認ください」「伺います」は良いけれど、「ご確認してください」「お伺いさせていただきます」はおかしい。
きちんとした敬語はコミュニケーションの基本。どこかでしっかり学ぶ必要がある。できたら、覚えの良い子どもの頃に見聞きして身に着けるのが望ましいと思う。
でも、テレビであんなに「させていただく」と言っているので、それが正しい使い方になるのも間近かもしれない。「させていただく」一つ覚えて敬語になるなら、それはそれで、便利かとも思う。(舞)

本棚の整理をしていたら、徒然草の解説本が出てきた。子どもが高校生の頃に使った参考書だと思う。
パラパラとめくって楽しくなった。すらすら読めるから。もちろん日本語だから読めて当たり前だけれども、古文を勉強した頃からもう何十年も経っている。何もかも忘れていると思っていたのに、「あはれ」「すさまじき」「をかし」といった古語の意味を覚えていた。脳はこれらの記憶をどこかに収納していたらしい。
それに、文中に分からない単語があっても文の意味は不思議と分かる。人が古くなると、自然と古文が読めるようになるものだろうか。
読んだ覚えのある文もある。「おぼしき事言わぬは腹ふくるるわざなれば」とあり、「もの言わぬは腹ふくるるわざ」は徒然草出典だったと思い出す。
「善き友、三つあり。一つには物くるる友。二つには医師。三つには知恵ある友」高校生の時には、これはあまりにもひどい言い草だろうと思った。でも、この年になると現実的な考え方だと素直に認められる。
他の段も読んでいくと、うなずけることばかり。現代に通じる真理の数々。七百年も前の人が考えたことが、今の私にはすんなりと同意できる。徒然草は年を重ねてから読むべきだ。
さて、今から七百年後の人にも、同じように肯定されるだろうか。
(舞)

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