女の落書帖

 子どもの頃嫌いだったものが、大人になると美味しく食べられるのはなぜだろう。
 たとえば、ぬた。野菜や魚介類を酢味噌で和えた料理である。春のわけぎのぬただと、見た目が味噌の茶色だし、わけぎのぬるっとした食感が気持ち悪るいし、酢味噌は酸っぱいし、子どもには辛いメニューだった。ハマグリやイカなど、一緒に和えられた魚介類を掘り出して食べたものだ。 たとえば、サザエの壺焼き。殻から引き出したサザエの先端の緑の部分。苦みと磯の香りが、嫌いだった。たとえば、サンマの腹。二つ切りにしたサンマは尻尾の方が断然好きだった。
 そんな苦手だったものが今では大好物である。サザエの肝もサンマの腸も苦いだけではない。旨みや甘みの中にほのかな苦みを感じて美味しい。 これはどうしてだろう。大人になるにつれて、舌も成長するのだろうか。感じ方が変わったり、幅が広がってきたりするのだろうか。
 経験の積み重ねもあるのかもしれない。他人が美味しいというものにはチャレンジしたくなり、新しい味を経験値として蓄積していく。ビールの苦さも、楽しい場所の美味しいものと記憶されていく。
 腐敗かと思う匂いのフナ鮨やへしこを好む人もいる。ドリアンも美味しいらしい。味覚の奥行きは深い。更に経験を積めば美味しいものが増えそうである。   (舞)

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