女の落書帖

 八百屋の店先で珍しい豆を見つけた。松阪産パンダ豆と書いてある。大豆色の豆に楕円状の黒い部分。白地に黒い楕円状の目を持つパンダに似ているからパンダ豆と呼ぶのだろうか。
 豆好きとしては、初めての豆を見過ごすことはできず、一袋を買って帰った。調べてみたら、鞍掛豆が一般的名称であるらしい。馬に黒い鞍を掛けたように見えることから名づけられたという。おもに信州や東北で栽培され、青大豆に近い品種だそうだ。
 早速煮てみた。いつもの大豆と同じように、一晩水に着けて圧力鍋で加熱する。柔らかくなった豆は、横に広がった感じで空豆にも似ている形。食べ方はひたし豆が一番だそうだ。煮豆につきものの砂糖は必要ない。昆布だしに塩と少量の醤油で煮たて、冷まして味を含ませた。
 鞍掛豆は豆自体の味がしっかりしている。あっさり味付けのひたし豆で美味しく食べられた。塩ゆでだけで美味しい枝豆と似ている。
 豆の歴史は古くて、紀元前何千年という頃から世界各地で食べられている。日本各地、世界各地の豆を食べてみたいと思うのである。だから珍しい豆はうれしい。今度、鞍掛豆を見つけたら、たくさん買ってこよう。
 一緒に買った松阪産白いんげんは少々小ぶり。どんな味がするだろうと、これも楽しみだ。(舞)

 

 外気温が低くて人々はまだ厚いコート姿だが、ショッピングセンターはもう春色。パステルカラーや生成りが溢れていた。でも春もの衣料を買うには早すぎる。
 そんな時に館内アナウンスが入った。「下着売り場で二時からタイムバーゲンを行ないます」それじゃ行ってみなくてはと思うのが消費者心理である。
 売り場通路にはパジャマのラックや下着のワゴンが出されていた。「今から三十分間、ついているお値段の半額となります」呼び込みの店員さんが大声を出した。
 商品はすべて冬もの。在庫整理のためのバーゲンセールであるらしい。すでに値下げされた価格の半額だから、ウソみたいな安さだが、買ったところで冬はじきに終わる。家に帰れば、タンスの中に十分すぎる量の衣服がある。でも、下着なら来年用に置いておいてもよいのではないか。
 実はセール会場に足を運んだ時点で、買うつもりなのである。周囲の人の熱気に引きずられる。同じように買わねば負けだという気持ちになる。私はバーゲン心理に容易く流され、パジャマ二着を抱えてレジに行くことになった。
 高揚感とささやかな達成感、自己肯定感。「よくやったね。賢い買い物ができた」まるでスポーツでもした後のように、気持ちが軽くなる。ストレスが消えていく。バーゲンの効用である。 (舞)

 カキのおいしい季節である。カキフライもカキ鍋もおいしいけれど、レモンをキュッと絞った生ガキが一番だと思う。
 生ガキにレモンという食べ方を知ったのは、パリを舞台にした小説の中。レマルクだったかモーパッサンだったかの小説に、島のレストランへカキを食べに行くという場面があった。
 今のようにパリの地図を簡単に見られる時代でもなく、どうしてパリに島があるのか、その島のレストランがにぎわうのかが、不思議だった。島とはセーヌ川の中州のことで、パリの中心であるとは、ずっと後になって知ったことである。
 小説の中身はすっかり忘れたのに、レモンと生ガキが鮮明に記憶にある。そして、フランス人のようにカキを食べてみれば、美味しかったというわけだ。
 新鮮生食用カキが手に入れば、左手に軍手、右手にカキナイフで、カキ剥きをする。ただ、上手になる頃にはカキがなくなるので、次の機会にはまたカキ剥きが下手になっているのが残念だ。
 カキを生で食べるなら、体調の良い時に。カキは食当たりしやすい食品だから、注意が必要である。産地は的矢、浦村など。三重県には厳しい衛生基準のみえのカキ安心システムがある。三月初旬には「浦村牡蠣の国まつり」が開催される。カキ詰め放題をして焼きガキを存分に食べてこようかと思っている。(舞)

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