女の落書帖

  朝、一度目が覚めたのに、それからまた寝入ってしまった。まどろむうちに、夢を見た。 私は脚本家だった。パソコンに向かってドラマの脚本を書いている。気に入らなくて、書いては消し、書いては消しを繰り返し。
 ドラマのヒロインは二十代の独身女性。友人の夫と危うい関係にある。ドラマは二人が恋に落ちるあれやこれやで始まる。ドロドロになりそうな予感。
 ヒロインとなる女優も出てきた。どこかで見たような美人だが、誰かは分からない。友人役は気立ての良さそうな美人。友人の夫役は後ろ姿しか見えないがかっこいい。まるで、韓流ドラマのような美形揃いだ。
 いったいこの夢は私の頭のどこから来たものか。夢診断やら夢占いやらを探してみたが、ドラマや女優が何を表わすのか分からない。ただ、自分を見る、書くのに苦しむ自分を見るというのは、何か厳しい状況であるらしい。
 私には悩みごとがあって、それが夢として現れたのだろうか。自分自身で分からない悩みなど、無視するよりほかはないけれど。
 それよりも、未だに目覚まし時計が必要なことと、もう一度寝入ってしまうことが問題だ。もうずいぶん前から、寝付きが悪く、寝起きが悪い。脚本を書くのに苦しむ夢は、起きるのが嫌で見たのかもしれない。 (舞)

 ある人によると、苦情を言えるようになったら、おばさんだそうだ。 
 先日、産直野菜の並ぶ店で大和芋を購入した。ところが、二日後に皮をむいたら半分以上色が変わっていた。青カビも生えている。少々ましな一個を料理し、生産者のバーコードをとり置いた。 こんな場合、どうするか。芋が四個入って百二十円。金額はわずかである。しかし、無視できない。日付を見れば私が買うまで六日間店の棚にあったようだ。食品管理責任は私の二日より店の六日に重いのではないか。 次に店に行ったのは、何日か後である。買い物のレジで件のバーコードを提示した。「これ買って二日後に食べようとしたら、半分以上腐っていたんですが」と私。レジのお姉さんは「言っときます」。少々カチンと来た。「こういう古い商品を並べておいてもらったら困るわ」「だから生産者に言っときます」「あなたは私に何も言わないの?」
 何かをしてほしいと粘るつもりもなかったのでそこまでにした。これが大手スーパーのレジ係なら、即座に「申し訳ございません」と返ってくるはず。マニュアル通りだとしても店の看板を背負って謝ることができる。 自分の落ち度でなくとも頭を下げなくてはならない時がある。どうしても自分で謝りたくなかったら上司を呼ぶ。レジに限らず、接客の基本だろう。そこまで教えてやればもっとおばさんらしかったと思う。  (舞)

 その小さなスーパーでは、いつも歌謡曲が流れていた。大手スーパーの「魚サカナさかなー」や「きのこのこのこ元気な子」とは違って、販促をまったく考えていないところが偉かった。噂では社長の趣味だということだった。
 普段聞かない音楽も、自然に耳に入ってくると馴染むもの。買い物している間、何とはなしに曲を聴いて、歌えるほどに覚えることもあった。
 そのことをきょう思い出したのは、スポーツジムのダンス曲がナツメロメドレーだったからだ。「飛んでイスタンブール」だったり「愛がこんなにつらいものなら私独りで生きていけない」だったり「好きだったのよあなた胸の奥でいつも」だったり。歌謡曲がJ─POPと呼ばれる前の懐かしい曲ばかり。歌詞に物語や深い意味があった時代の曲である。
 曲に合わせて身体を動かしていると、メロディーに乗って歌詞が口をついて出てきた。歌謡曲好きでもなかったのに、ほとんど歌えるのはあのスーパーによく行ったからだろうか。若い記憶力のせいだろうか。
 もうそのスーパーはなく、私はJ─POPを聴くこともない。サウンド重視で、日本語と聞こえないような近頃の歌は、もうよく分からないのだ。モーニング娘3期ぐらいを終わりとして歌手の見分けもできないので、私のナツメロは九十年代あたりで絶えそうである。     (舞)

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