女の落書帖

朝のクモは福が来る。誰から教えられたのだろう。その言葉を知っている。
 今朝、和室で掃除機をかけていたら、黒い塊があった。ゴミだと思ったら、ぴょんと動いた。クモだ。ハエトリグモだ。小さくてかわいいクモだけれど、さすがに素手では触れない。新聞紙を持ってきて、その上に乗せた。ぴょんぴょんと逃げようとするのをやっとのことで窓の外に出した。
 クモはお釈迦様の使いという。お釈迦様はクモを掃除機で吸わなかった私の善行を見てくれただろうか。いや、これは善行だろうか。暮らしやすい室内から外に追放したのだから。
 虫には結構強い私だが、クモは苦手だ。子どもの頃に読んだ漫画でクモを恐れるようになった。作者は楳図かずおだったか、おどろおどろしい絵とストーリーに眠れなくなった。
 軒先にはジョロウグモ、家の中にはハエトリグモ。クモは見慣れたものだったが、結婚して住んだ家には十センチを超えるクモが出没した。漫画のクモを思い出した。
 名前を調べるとアシダカグモだと分かった。怖くて仕方がなかったが、子どもの前では虚勢を張った。虫ごときでキャアキャア言ったら、子どもにまで恐怖が伝染する。平気な顔を装って新聞紙に乗せ、窓の外へ。
 あんな大きなクモはもう何年も見ていない。あの頃は健気な母だったと自分をほめてやりたい。            (舞)

 世の中にはいろいろなサブスクがある。定額課金制のサービス。会費を払い続ければ、音楽でも動画でも宅配でも車でも利用ができる。
 そういうのは癖になるから止めておこうと思っていたけれど、つい始めてしまった。食料品の宅配だ。
 お得な上にフードロス削減に貢献できると書いてある。賞味期限が迫ったものや包装に少し問題があるものなど、もったいない食品が届く。
 初めて届いた時には、段ボール箱から自分では買わないようなお菓子やインスタント食品が出てきて、少しがっかりした。
 でも、自分では買わないものが手に入る新鮮さも感じた。食べてみれば美味しいお菓子だったし、友達へのちょっとしたお返しに最適だったりする。だからしばらく続けてみようと思っている。
 宅配は違うが、サブスクは基本的に使い放題だ。使えば使うほどお得になる。動画配信など、どれだけ見ても定額。会員制のスポーツクラブもサブスクだ。何度行っても定額。
 反対に、使うことを忘れていても料金は払わなければならない。あれやこれやのサブスクを契約すると費用がかさむ。
 契約は簡単だが、解約はそうでもない。アカウントやパスワードをきちんと管理していないといけない。本人が突然倒れたりすれば面倒なこととなる。何を契約しているか、きちんと書いておかなければ。    (舞)

 子どもの頃、遊びから帰りながら靴を飛ばした。靴を半脱ぎにして夕焼け空に向かって蹴り上げる。飛んで行った靴が裏返ったら明日は雨。表だったら晴れ。横になったら曇り。それが天気予報。
 天気予報天気予報と三度唱えれば交通事故に合わないフグに当たらないとも言った。テレビの天気予報より、おばあちゃんの言葉の方が合っていた。「西の山が見えたら晴れる」
 それが今は、天気予報がよく当たる。「明日の朝には雨が止むでしょう」と言えば、朝起きたら雨が止んでいる。「折りたたみ傘を持って出かけましょう」と言えば、雨がポツポツ降ってくる。
 この頃の天気予報は進んでいる。お天気衛星から雲の動きを見るのだから、あの雲が移動したら降り出すと分かるだろう。
 それでも近年の急激な気候変動のせいで難しいこともありそうだ。線状降水帯がどの位置にできるか。十キロ違えばそこに住む人には大きな違いとなる。雨の降り出しも厳しく求められる。夜には雨ではなく、九時にはこの地域に雨雲がかかるというように。私も二週間先の天気や気温まで調べてしまう。
 それで、天気予報が当たらないと言う人が今もいる。大気の動きには変動があるだろうし、温暖化で過去のデータも頼りにならない。そんな中で未来を予測するのだから、少々のずれはあると思う。
       (舞)

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