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発達障害のリアルを当事者・専門家らが語る対談連載。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違うために幼いうちから現れる様々な症状。出生率は数十人に一人と言われる。心理士の米田奈緒子さん、当事者の母・堀井真由美さんが発達障害を持つ子の居場所作りや余暇活動、親同士の繋がりについて語った(敬称略)。
堀井 平成24年度に始まった「放課後等デイサービス(略称・放デイ。障害のある就学児が放課後や長期休暇中に利用できる福祉サービス)」の施設が多数設立されたことで子供の居場所が家庭以外にもできましたが、施設によってサービスの内容が様々で、療育的なところもあるし見守り的なところもあります。しかも施設の数が多すぎるため逆に自分の子に合うところを選ぶのが難しく、入れてもらえるところにとりあえず入るというケースもあります。親が施設を選ぶために役所に情報収集に行っても市内の施設の一覧表をもらえるだけで、結局自分で一ケ所ずつどんな施設が確認しなければいけません。また以前こんぺいとうの勉強会でも話題になったんですが、親も放デイに子供を預けることに慣れてしまい、子供が18歳を過ぎ、支援が大人対象のものに替わりそれまでと支援内容が大きく変わると途端に慌てる。慌てないためには、本人が家で楽しめる余暇活動が要るよねという話になりました。
こんぺいとうの勉強会に来る人の子供は障害がある子の中でも癖が強い子が多くて、親御さんは子育てに悩んでいます。「うちの子はこうなんです」と子供の特性を説明したら対応してくれる人が世間にはまだ少ないこともあり、在宅で過ごしている子も。そうすると親も負担が大きく、参ってしまう。
一方、ちょっと先を行く、先輩お母さんの話を聞くと、皆さん共通しているのが、独りで頑張っているのではなく味方が沢山いるので、味方は重要だと思います。
米田 一生懸命勉強して真面目に生きてきた人が、大人になって子育てが上手くいかず悲観的になり追い込まれるという例も沢山あります。そういう方が親同士の繋がりを持ち気持ちを楽にしてもらえる場が、こんぺいとうさんだと思います。
実は我が家もそうです。発達障害という言葉が出始めた15年くらい前に長男が診断を受けた時は、私も分からなくて悩んで夫に相談しましたが、考えてみたら、夫も分からないですよね。それで、必死に勉強しました。ただ、家族みんなが特性ある方だし、個性と思って支え合うことが出来たのでそれが差し障りとはなりませんでした。
今も、個性的で周りと上手く馴染めないようなタイプの子たちが集まり「ふにゃ」という若者グループを作って、FACEでパソコンを使いゲーム仕立ての療育プログラムを作っていますが、私は「君たちはシリコンバレーにいる天才のようだね!」と感動の毎日です。その子達は若いのでゲームを作るのがすごく早い。私にはできないことですし、彼らが次世代で活躍してくれると期待しています。
(第4回終わり)
2020年2月27日 AM 4:55
発達障害のリアルを当事者・専門家らが語る対談連載。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違うために幼いうちから現れる様々な症状。出生率は数十人に一人と言われる。心理士の米田奈緒子さん、当事者の母・堀井真由美さんが発達障害の一つ、LD(学習障害)により読み書きが苦手な子の療育を語る(敬称略)。
米田 FACEはLDを持つ子供の療育を行っています。読み書きが極端に苦手な子の中には、手や目などを思い通りに動かす身体協応の発達の遅れや、正しい形が見える・音を聞き分けられるといった認知発達の遅れが要因であるケースも。その子に応じた方法でトレーニングをします。
堀井 字が書けない要因を、様々な角度から確認することができる機関は少ないんですよね。
米田 そうなんです。例えば複数のスティックを見本と同じ形に置く視覚認知のトレーニングでは、皆で棒付きアイスを食べてその棒をスティックとして使ったりして面白くしています。子供は楽しんでやればすごく力がつくので。この様に教材を工夫できるのが、療育の良さだと思います。
そういう子たちの多くは、身体全体の筋肉発達もアンバランスなので、無駄に力が入っているために、文字を書いているとすぐに疲れてしまうので、鉛筆を持つというだけで嫌がるのです。でもFACEでは鉛筆を使わないトレーニングから始めるので喜んで通ってもらえるし、すぐに文字を正しく書けるようにはならないんですが、書くことが苦痛ではなくなり、練習しようという気持ちになれるんです。少しでも多く好例を作り、療育の情報を発信し、苦しんでいる親御さんやお子さんの手掛かりになれば。
堀井 ただ当事者の親御さんがFACEさんと繋がるのが中々難しい。
米田 そうですね。運営が民間ということで怪しいというイメージを持たれることもあり、それを払拭したいんです。
医療・教育機関はそれぞれ児童福祉の課題に一生懸命取り組んでいますが、各機関を繋げるのが難しい。子供は病院ばかり、または学校ばかりに居るのではなく家を拠点にあちこちで活動しているんですけどね。そして、そういう姿を見立てるのが私たちも行っているアセスメントです。
堀井 保護者も子供を適切にサポートするためにアセスメントが欲しいんですが、どこに行けば良いのかが分からない。
米田 そういった情報を広めたいのですが、FACEだけでは難しいので同じことができる人を増やし、チームで療育と情報発信に取り組むモデルを作りたいと思っています。 (次回に続く)
2020年2月13日 AM 4:55
発達障害のリアルを当事者・専門家らが語る対談連載。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違うために幼いうちから現れる様々な症状。出生率は数十人に一人と言われる。発達障害を持つ子の支援に繋がる「発達検査」「自閉症疑似体験」について心理士の米田奈緒子さん、当事者の母・堀井真由美さんが語る(敬称略)。
米田 私たちFACEは、三重県内の公的機関で発達検査を行っています。この検査の知名度が上がったこともあり、受検希望者や、1度受けて1年半後に変化を検証するため再度受ける人も増えてきました。
私がとても嬉しかった事例なんですが、低学年のとき落ち着きがなく親も大変だった子が、高学年で検査を受けて中学での支援に繋げ、先日3回目の検査をしたら落ち着きのなさがほとんど見られなくなり、高校受験に向かっていたんです。学校と家庭が連携し、早期の診立てと支援が適切に行われると子供はこんなに変われるんだなと実感し、これは頑張らないとと改めて思いました。
発達障害を持つ子の支援策に悩んでいた教師や保護者が、「発達検査によって光が見えました」とおっしゃられることもあります。例え厳しい検査結果であっても、きちんと受け止めてもらえれば、適切な支援を始めるきっかけになり得ます。
堀井 こんぺいとうからも、FACEさんに、中学生や高校生になってから周囲
になじめないけれど精神科を受診するのはハードルがとても高いと感じている子を、何人か紹介しましたよね。
こんぺいとうでは、自閉症の人の見え方や聞こえ方を疑似体験してもらうキャラバンを行っています。「こういう見え方、聞こえ方の人もいる」という知識が頭の片隅にあるのとないのとでは、実際出会ったときの接し方が違ってくる。「こういう行動をしているのは、こういう風に見えているからかも」と思ってくれると、親としても、子供と一緒に街に出るのが楽になります。
米田 コンピューター技術が進む中で「認知」という言葉が注目され、もしかしたら一人ひとり全然違うものを見て・聞いているのではという考えがやっと一般的になってきましたよね。例えば「赤色」も、自分が思う赤と他の人が思う赤は、違う色かもしれない。その傾向がすごく強い子には、ただそこに居ることがすごくしんどい。本人にその状況にある程度慣れてもらいしんどさを緩和することと、周りが理解することの両方が必要です。 (次回に続く)
2020年1月23日 AM 4:55