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お遍路の旅の間、ほとんど毎日のようにコンビニを利用した。三重県内のコンビニには、店内に椅子やテーブルを置いた飲食用スペースを設けている店があるが、四国では一度も見なかった。そんな中でスリーエフやサークルKの一部店舗に店の前、あるいは横に遍路優先のベンチやテーブルを置いてくれてあるところがあった。これが実にありがたい。
特にスリーエフは弁当などを買うとお茶の500ペットボトル1本をお接待してくれる店もある。また新店舗のトイレは車椅子対応でゆったりと広く、しかもシャワートイレ。日ごろシャワートイレが当たり前の生活をしている身には、くつろげて嬉しい限りである。このコンビニ、中部地方には進出していない。四国でも高知・徳島に多く、愛媛・香川では見かけなかった。てっきりローカルコンビニと思いきや本拠は横浜という。東京の友人から激励の電話があった時、訊いてみたら関東ではお馴染みの店らしい。ともかく、歩き遍路には一番人気のコンビニなのだ。
七子峠からの遍路道を下りきり影野の遍路小屋で4人で小休止していると、前夜同宿のTさんがやってきた。そえみみず遍路道を通ってきたという。今日は金曜日、土日を控え懐が淋しくなってきたので、ぼくらは1キロほど先の郵便局でお金を下ろすため、3人に別れを告げて一足先に出発した。
12時前、JR土讃線・六反地駅手前のスリーエフに入る。店舗横に『お遍路さん優先いす~巡礼中の疲れた足をお休め下さい』の表示があるベンチ、椅子、テーブル……ここで昼食をとることにしたのだ。
広島焼風やきそば、おいなりさん、それにお茶のペットボトルを1本。レジでは若い男性の店員が応対した。お金を払うと「お接待です」と言ってお茶のペットボトルを2本差し出す。コンビニが店の稼ぎ頭の一つであるペットボトルをお接待!これには驚いた。伊右衛門を1本買ってある。昼食で2本も飲まないし、残れば荷物になるので1本でいいと告げる。が、店員は「いえ、一人1本の規定です。お二人ですので2本になります」と譲らない。杓子定規で弱ったが、『お接待は断ってはならない』のルールを思い出し2本とも頂くことにした。
晴天。だけど日陰だと寒い。テーブルを日なたに移動させ、靴下を脱いで足を干しながら弁当を広げ、リラックス、リラックス。
間もなく30過ぎの青年遍路がやってきた。初顔である。お茶のお接待情報を伝えると喜んで店に入り、ペットボトルと弁当を手に下げ出てきた。今回初遍路。3月5日に打ち始め。一日平均30キロペース、多い日には38キロ。さすが若い。足のマメが少し痛いと言いながらも、食事と休憩を合わせ20分で発っていった。
続いて、前夜血マメの治療にイソジンをお借りした奈良の66歳夫婦が通りかかる。食事は2キロほど先の観光物産センター『ゆういんぐしまんと』でとるという。ベンチにちょっと腰を降ろしただけで先を急ぐ。
入れ替わりに今度はミスター53到来。まだ朝食を食べてないと、スリーエフで朝食分のパン、更に非常食分を調達。お接待のお茶を飲みながらパンをかじり終えたら、『ゆういんぐしまんと』で美味しい仁井田米のおにぎりを買うと言ってそそくさと出て行く。
ぽかぽかと日向ぼっこで気持ちが良いのと、次から次へ千客万来で話し込んでしまったのとで、お昼の休憩が1時間10分を超えてしまった。そろそろ出発しようと靴下を履いてるところへまたまた現れたのが、ロストおじさん。
ぼくらは神峯寺で半日遅れ、桂浜にも寄り道しているので、もう完全に1日分は先に行っていると思っていた。実際、他の連中は1日先を歩いているが、彼は高知市で1日休養したのだとか。お互い懐かしい旧友にあったような気分。6日ぶりの再会を喜びあった。今日は岩本寺の宿坊に泊まるけど、足摺岬ではぼくらと同じホテル足摺園に予約を取り直すとロストおじさん。3日後の再会を約し、ぼくらは先に岩本寺をめざした。 (西田久光)
2011年2月3日 AM 4:54
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