加入者の大部分が低所得者層で負担の大きさも原因となり、保険料の収納率の低下による赤字運営が続く津市の『国民健康保険(国保)』。現在も収納率は90%を割り込んでいるが、国保の業務を担当する市保険年金課の地道な取り組みや市が抱える債権の困難案件の滞納整理を請け負う特別滞納整理推進室との連携で少しずつだが改善をしている。 

 津市の国保加入世帯数は昨年10月1日現在で4万1643軒。保険料収入は平成23年度の合計で約63億4700万円。
 主に地方自治体が運営している国保の加入世帯は後期高齢者制度に以降する前の74歳以下の高齢者や個人事業主などが中心で他の公的な保険制度と比べると低所得者層が多いのが特徴といえる。津市の保険料の平均額が一人当たりに換算すると約9万5千円、世帯全体でみると約15万6千円と所得に占める負担がいかに大きいかが伺える。
 国保は基本的に保険料収入と運営自治体の法定内繰り入れや国・都道府県からの交付金などを併せた特別会計で運営しているが、長い不況で保険料の収納率は低迷。加入者に高齢者が多く医療費支出も年々、増加傾向にあることからも国保は全国的に赤字運営に陥っている。津市でも赤字が続いており、平成18年の10市町村による合併時にあった基金11億円もあっという間に枯渇。やむを得ず平成22年度には一般会計から法定外繰り入れを行ったが平成23年度より保険料の値上げを余儀なくされている。
 受益者負担という制度の性質から考えると収納率が下がった分、保険料を値上げして補填するしかない。しかし、この赤字は収納率向上に対する市の取り組みの甘さも一因で『加入者間の平等』という大前提すら守れていないことが問題視されていた。それは、平成24年10月末現在で滞納保険料の累積が約23億3千万円と莫大なことからも明らかだろう。更に保険料は2年で時効を迎えるため、平成23年度で約5億5千万円が回収不能となっている。この状況での値上げは理不尽といわれても仕方ない。
 ここまで収納率が落ち込んだ一因には国保の業務を担当する市年金保険課が保険証の発行や窓口・電話対応など国保のあらゆる業務を行っていることにある。税務には収税課という徴収の専門部署があるが、同課では他の業務と同時に滞納整理をこなさなければならず体制的にも限界がある。
 そんな苦しい台所事情もあるが、保険年金課でもこの状況を打開すべく改善に向けた努力を重ね、着実に成果を上げている。保険料は滞納すれば延滞金がかかり、更に納付が困難になることから現年度納付の徹底に努め、収税の経験がある職員のノウハウを生かしながら、滞納者に電話で納付を求める催告センターも活用。コンビニ納付も収納率向上に寄与している。
 更に分納誓約による時効中断措置(時効が2年伸びる)も実施。財産調査による差し押さえも積極的に行い、平成24年度10月末で440件約1億7千万円を回収している。市税や国保料など市債権の困難案件を専門に扱う「特別滞納整理推進室」とも連携。同室は平成24年度11月末で229件約1億7000円の移管を受けており、約6800万円の回収に成功している。同室への移管予告を送付した結果、納付に応じる滞納者も多く、抑止力としての効果も大きい。その成果として平成21年度の保険料収納率の現年度分が86・2%、滞納分が7・2%から平成23年度で88・5%、滞納分が15・8%まで上昇。今年度も昨年度以上に上昇する見込みだがその一方で赤字から約2億円ほどの法定外繰り入れも見込まれるなど、依然として窮状は続いている。
 収入に占める負担割合が重過ぎることも含め、国保という制度自体が限界に来ているのは事実。抜本的な制度改革を求めて声をあげることも重要だろう。
 しかし、現行制度に従うしかない現状では、更なる保険料上昇を招かぬよう加入者間の平等を守ることが最優先事項となる。今後も津市の最大限の努力と責任ある運営を期待したい。