長年空き家状態が続いている「コミュニティ瑞穂」の1棟

 40歳未満の若年夫婦の美杉地域への定住を目的に格安で一戸建て住宅を貸し出している『津市若者住宅』。その内、「コミュニティ瑞穂」=津市美杉町太郎生=では全5棟中、2棟が長年、入居者無しの状態となっている。田舎暮らしブームを受け、津市では美杉地域への移住希望者を対象とした施策に力を入れ、成果を出しているだけに、この現状は看過できない。有効活用に向けた市の取り組みが求められている。

 「コミュニティ瑞穂」は旧美杉村時代の平成7年に建設。平成5年に建設された津市美杉町竹原の「コミュニティ持経」と共に、平成18年の市町村合併時に津市が引継ぎ、『津市若者住宅』として運営している。
 瑞穂は5棟全てが2階建てで、持経は平屋と2階建てという構成。どの物件も3LDKで家賃は月額3万2千円と格安。夫婦(もしくは婚約者)各々の年齢が40歳未満であることなどの条件を満たしていれば、一般的な市営住宅と違い、世帯収入による入居制限がないのも特徴といえる。
 空きが出た場合は、他の市営住宅と同じく毎年6・9・11月に市の広報誌を通じて募集。現在、2棟が空いている持経の方は広報誌に募集記事を掲載すると確実に入居希望者からの応募があるというが、平成18年に津市が引き継いだ時点より2棟がほぼ空き家状態となっている瑞穂の方への問い合わせはほとんどない。
 この明暗を分けているのは立地条件。持経がある竹原は美杉の入口で津市中心部から約40分。逆に瑞穂のある太郎生は奈良県境と接する津市最奥の地。市中心部へ出るには約1時間半もかかってしまうため、働き盛りの40歳未満の世帯がいくら家賃が手頃でも入居を躊躇うのは当然といえる。
 しかし、太郎生は若年層の人口流出が顕著な美杉地域で最も50歳未満の世帯が多い地域。その理由は、名張市の八幡工業団地へも30分で通えるなど、他に比べると若年世帯が仕事をしながら暮らし易い環境にあるからだ。この事実は、広報の方向性を変えるだけで入居希望者が見つかる可能性を示しているといえる。
  田舎暮らしブームの中、豊かな自然環境が広がる美杉の魅力が再評価されており、津市でも「空き家情報バンク」を始め、田舎暮らし希望者を対象とした多彩な事業を展開。県も今週末には名古屋で「移住フェスタ」を開く予定で、こういう場も活用すれば効率のよいPRができるはずだ。
 今後、若者住宅を管理する津市市営住宅課では広報誌への掲載に加え、市HP上での紹介やパンフレットを作ってPRに努めるというが、定年後の第2の人生をのどかな田舎で過ごしたいというニーズも多い。このまま空き家状態が続くのであれば、条例改正による年齢制限の引き上げなど、柔軟な施策で貴重な財産を活かすべきであろう。
 問い合わせは市営住宅課℡津229・3188。

講演する瀬戸内寂聴氏

 13日、三重県総合文化センター大ホールで学校法人真盛学苑龍宝幼稚園=津市乙部、杉谷秀也理事長=の閉園記念講演が盛大に開催され、講師の瀬戸内寂聴氏が仏の教えなどを語った。後援=天台真盛宗西来寺。
 同園は昭和4年の創立以来、戦災を乗り越えて83年間、熱心な教育活動で地域に親しまれ、ピーク時は約200名の園児が在籍していた。しかし近年、少子化で園児数が急激に減少したため、惜しまれながら今月末で閉園する。
 当日は、冒頭、前葉市長が卒園生代表として「龍宝幼稚園は一つの歴史をしっかり作り、津において十分な存在感を示された。皆さんと共に明るく送り出したい」と挨拶。次に、天台真盛宗本願寺住職の荒井眞道さんらの一絃琴と、尺八などの演奏や、谷篤さんの唄のステージがあった。
 続いて、瀬戸内さんが満席の会場に「縁は向こうから来るもので、一度結ぶと切れずにどこかで繋がっている。
 大いなるものに、自分の欲を祈っても叶わない。私自身、自分以外の人の幸せのためや苦しみが消えるよう祈って叶った経験が何度かあります。また『無常』とは常に在らず、同じ状態は続かないという意味。不幸もずっとは続かない。人のせいにせず、自分が状態を変えていこうと考えましょう」などと語りかけた。

備蓄された歯ブラシと歯磨剤

 公益社団法人津歯科医師会=津市栄町、鎌谷義人会長=がこの度、東南海大地震などの大規模災害時に市民を支援するため、所属する市内137軒の歯科医院全てに、歯ブラシ各100本と、水なしでも使える歯磨剤「デンタルリンス」各24本を備蓄した。デンタルリンスは今後、備蓄数を増やす予定。
 同会では、阪神・淡路大震災や東日本大震災などで必要とされた歯科医の役割を教訓に、災害時の口腔ケアに関して様々な取り組みを実施している。平成19年には、津市と災害時に歯科医療救護支援を行う協定を結んだ。
 今回の備蓄は、歯科医院の数の多さや広域をカバーする立地を生かし、災害時にいち早く避難所に届けて市民の口腔ケアを支援するため取り組んだもの。
 避難生活では、歯ブラシや水などが不足し歯磨きがしづらいため、口腔衛生の低下や、高齢者の誤嚥性肺炎(口内の細菌が肺に入り発症する肺炎)が深刻な問題となる。例えば、阪神・淡路大震災では震災関連死の約4割(223人)が肺炎によるもので、そのうち多くが誤嚥性肺炎だと考えられている。
 同会では「当会の歯科医院が備蓄していることを市民の皆様に広く知ってもらい、災害時に役立ててもらいたい」と話している。

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