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豊が丘地区(豊里ネオポリス)は、地域内を路線バスが走っているものの、ルートの関係で津駅まで約1時間もかかり、運賃も高齢者らには軽くないため、日常生活の足としては活用し難いという声が大きかった。そこで地元の豊が丘地区自治会連会が主体で生活支援などを行う『ライフネット豊が丘』が、住民ニーズに即したコースで走る福祉バスの運行を4月から開始しようと現在、試行運転に取り組んでいる。
豊が丘地区は津市内でも屈指の大規模住宅団地で、現在は約2300世帯、約6500名が暮らす。団地の開発が始まってから30年以上が過ぎ、住民の高齢化が進んでおり、500名以上の交通弱者がいる。
そんな人たちにとって重要となるのが、通院や買い物で団地の外に出るための移動手段の確保。団地の目抜き通り沿いを路線バスが通っているものの、津駅に出るには団地を出た後、県道10号津関線から県道410号(旧津関線)に入り、国道23号から三重大前を通り、津駅東口へと至るというルートで約1時間もかかってしまう。運賃も往復で1200円と年金暮らしの高齢者には軽くはなく、利用し難いという声も大きかった。団地から車で県道10号をまっすぐ進み津駅西口まで行けば約20分ほどしかかからず、その道沿いには国立三重病院もあることを考慮すると、このような声が上がるのも仕方がないことだろう。
そこで平成21年に豊が丘地区自治会連合会は、地区住民の要望を受けて、津市とバス運行会社にコミュニティバスの運行もしくは路線の新設を要望したが、実現には至らなかった。そこで諦めることなく、なんとかコミュニティバスを運行できないか模索を続けた。
その結果、同自治会連合会が主体となって、家事援助や通院の付き添いなど、住民の生活支え合い(愛)活動を行っている「ライフネット豊が丘」が、活動の一環として福祉バスの自主運行を計画。昨年、市の福祉政策課を通じて地域福祉のパイオニア的な存在を援助する「三重県地域支え合い体制づくり事業」の認可を受け、その補助金で昨年10月から今月まで試行運転を実施している。その間に全国の先進地を視察したりもしながら今年4月からの本格運行に向け、運行計画を練り直している。
試行運転は第2、第4週に実施中。車両は地域の福祉施設から譲り受けた15人乗りのワゴン車で自治会会員たちが運転している。利用対象者は65歳以上の自治会会員で予約制。コースは、月曜日から金曜日の日替わり。広い団地内の移動から最寄りの病院や大型商業施設、津駅や総合文化センターなど5ルートを設定。行きは自宅や最寄りの公園まで迎えに行く。予想以上に好評で当初から増便をした日もあるほど。
本格運行後は行政の補助なども全く無く、道路運送法の規制で利用者からガソリン代はもらえるが、それ以外の必要経費の確保が大きな課題となる。現在は津市や国土交通省などと綿密に交渉を進め、持続可能な形を探っている。
同連合自治会長で自身も福祉バスのハンドルを握る生川介彦さん(78)は「今は福祉バスのことだけが前面に出ているが、これは買い物付き添いや通院支援など生活支えあい活動の延長線上のもの。本格運行後も住民のニーズを受け止めながらやっていく」と語る。
赤字路線の廃線などが進む中、地方の公共交通のあり方が問われているが、地域住民のニーズに合わせたコミュニティ交通を地域住民が運行するというのは全国的に見ても先進的な取り組み。様々な方面から大きな注目を集めそうだ。
2014年2月6日 AM 5:00
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