

検索キーワード




4月15日12時頃。私の車は2台の自転車を乗せ、国道165号を伊賀市方面へ走っていた。そう。密かに温めていた計画の実行に向けて。
といっても、それほど壮大な計画ではない。青山高原を自転車で登るいわゆるヒルクライムへの初挑戦だ。初心者の私たちにとってはとても大きな目標だ。
ルートは、伊賀側から風力発電施設のある辺りをめざすというドライブなどでお馴染みのコース。平日ならそれほど車も多くないので、ペースの遅い我々にも好適のように思えた。
この連載の趣旨を汲むと本来は自転車で国道165号から、青山高原へと至る県道512号まで走っていくべきなのだが、幅員の狭いトンネル内部を走るのは危険。仕方なく、車で移動することにした。
ちょうど良い場所を見つけ、キャリアからおろした自転車に前輪を装着。この日に備えて自転車屋で、軽い点検もしてもらうなど、準備は万端。相方のM君も気合十分といった様子だ。
登り始めてみると、思ったよりもきつくない。これも今までの道のりで鍛えられたおかげだろうか。
ついつい、調子に乗って勢いよくペダルを回しながら坂道を駆け上がっていく。車で何度も通った道だが、自転車だとやはり全く違う趣がある。澄んだ空気と美しい景色。シンプルだからこそ心地よい自然の妙味を存分に満喫できるのはこの上ない喜びである。
このコースは上り一辺倒ではなく、途中に下りも混じっているので程良く体力を温存できるのも良い。私たちは一定のペースを保つことができていた。
途中、景気の良い時代につくられたと見られる別荘地の横を通過。道路沿いの土地に地権者の名前らしきものが書かれた札がいくつも建てられているが、どの区画も何も建てられず放置されているようだ。錆びたアーチ門越しに打ち捨てられた公園も見える。ゆっくり朽ち果てていくのを待つのみとなった遊具がもの悲しさを漂わせている。まさに、おごれるものは久しからずやといったところか。思い返せば、これは何かの暗示だったのかもしれない。目的地まであと一息というところで、私たちにも〝盛者必衰〟の4文字が降りかかってきたのだ。
突如、私の自転車の前の変速機から異音がし始める。最初は小さな音だったが、次第に大きくなり、ついにはペダルが全く回せないという状況に陥った。
道路脇に自転車を停め、二人であれこれ確認すると前側の変速機が完全に滑落し、ギアに噛んでしまっている。どうやら、自転車屋で点検した際の調整が裏目に出てしまったようである。メンテナンス本を見ながら、あれこれいじってみたがお手上げ。断腸の思いで、ふもとまで引き返し再挑戦を誓った。(本紙報道部長・麻生純矢)
2014年5月1日 AM 4:55
<< 投資のおはなし41 資産運用を基本から学ぶ 街角通信 >>