そびえ立つ「君ヶ野ダム」の巨躯

そびえ立つ「君ヶ野ダム」の巨躯

 「リバーパーク真見」から、県道15号を上流へと遡っていくと、すぐに美杉町へと入る。
 もちろん、美杉町には、幾度となく来たことがあるが自転車でここを走るとは思ってもみなかった。芸濃町から始まったこの旅も思えば、遠くまで来たものだ。
 しばらく道なりに直進。美杉町竹原で名松線踏切手前の分岐を下之川方面へと進んでいく。やがて、そびえたつコンクリートの大山が見えてくる。そう。君ヶ野ダムである。
 その巨躯を仰ぎ見るように走る坂道をペダルに力を込め、一気に登っていく。このダムの好きなところは道から〝顔〟をじっくりとみられるだ。
 昔、ダムマニアの友達に携帯電話でこのダムを撮影した画像を送ったところ、ほどなく「立派な重力式ダムだね。下の方にある放水口がかっこいい」と返事が返ってきたことがある。普段なにげなく見ていたダムの建築方式がいくつもあることをこの時初めて知り、人の趣味趣向の多様さに感心したものだ。
 下之川方面へ向かう道は車の交通量が少ないため、非常に快適なサイクリングコースだ。鮮やかな新緑を水面に映すダム湖や清涼な空気。どれをとっても素晴らしい。最近、始めた走り込みの効果は絶大で、肉体的にも余裕が満ち溢れているのが自分でも分かる。いつもは辛口のM君も「やっぱりな。今日はいつもと違って体幹がブレてないなと思ってたんや」と彼らしい言葉をかけてくれた。
 のんびりとしたペースで進んでいくと、毎年2月11日に行われる奇祭「ごんぼ祭」で有名な仲山神社に到着。この祭りの内容を簡単に説明すると男性器を模した丸太と女性器を模した稲わらを乗せた神輿が境内を練りながら激しく合体し、子孫繁栄と五穀豊穣を祈るというもの。tsurude3
 早速、鳥居の前に自転車を停めて、境内へ入っていく。立派な御神木が立ち並ぶ参道の途中には、異形の狛犬が鎮座している。ほっそりとした体に大きな目。どことなく西洋の建築物の屋根に置かれるガーゴイルに似ている気がする。tsurude4
 社殿の中を覗き込むと、前述の性器を模した丸太と稲わらが祀られている。シャイなM君は、実物を見て気恥ずかしそうな様子。確かに生物としての根源をストレートに表現した祭礼には少々刺激的な印象を受ける人も少なくないだろう。しかし、そんな恥じらいを捨て去り、あえて原初の営みに立ち返る行為をするからこそ、そこに神が宿り、生命のきらめきを感じられるのだと思う。にぎわう祭りの様子を思い浮かべながら境内を後にした。(本紙報道部長・麻生純矢)