㈱岩出菌学研究所の原田栄津子さん(41・農学博士)は、同社が世界で初めて人工栽培に成功した南米チリ原産の食用きのこ『グリフォーラ・ガルガル』の研究成果によって、9月10日~12日に京都大学で行われた『日本きのこ学会25周年記念大会』で奨励賞を受賞した。

 

原田栄津子さん

原田栄津子さん

グリフォーラ・ガルガル

グリフォーラ・ガルガル

 日本きのこ学会は、その名の通り、きのこに関する学理とその応用技術について、発表・連絡・知識の交換の場となることで、きのこの科学技術に関する研究の普及と日本の学術と関連産業の発展に寄与することを目的としている。
 原田さんが受賞した奨励賞は学会が授与する3つの賞の内で前途有望な若手研究者を対象とした栄えある賞。受賞の対象となった研究「食用担子菌 Grifola gargal の分類学的解析および培養技術開発」は南米チリ原産のきのこ・グリフォーラ・ガルガル(以下ガルガル)の遺伝子学的な特徴などを明らかにした基礎研究が中心の内容。
 ガルガルは現地の人でも見つけるのが難しい幻のきのこと呼ばれている。同社では06年に世界で初めて人工栽培に成功している。
 ガルガルの大きな特徴は杏仁と同じベンズアルデヒドを主成分とした芳香。更に、カルシウムの吸収や筋肉強化など、骨の健康に欠かせないビタミンDが豊富に含まれている。そのほか破骨細胞形成抑制作用・抗酸化作用・抗炎症作用・血糖降下作用などの薬理効果が確認されている。また、美肌成分として知られるエルゴチオネインが多く含まれていることや、最近の研究では、動脈硬化症に効果があることも分かってきた。研究が進むにつれ、このキノコの持つ力が、どんどん明らかになっている。
 しかし、最初の頃は、同じグリフォーラ属のマイタケと姿形が似ていることから、理解や興味を示す研究者は少なかったという。その後、地道な研究と発表を続ける内に、徐々に学会の中へ浸透。そして5年前には、岩出菌学研究所の代名詞ともいえる姫マツタケと共にガルガルの性質などをまとめた研究成果を発表し同学会の技術賞を受賞(岩出菌学研究所の川出光生さんと共同で発表)。更なる地道な研究の結果、今回の受賞に繋がった。 
 原田さんは現在、三重大大学院医学系研究科の免疫学研究室にも籍を置きながら研究を続けている。「ガルガルが人の疾患に効果があることも徐々にわかってきた。病気の治療にも活用できるようになれば」と意欲を燃やす。まだまだ未知の力を秘めたガルガル。今後の研究の発展と様々な活用にも期待される。