「結婚して一番驚いたことは…」と娘が話し出した。思わず身構えた私に、「鮭の皮は食べずに残すものだった。そこまで食べなくて良いよと言われてしまって」と娘。
 我が家では鮭の皮を食べるのが普通だったのに、行儀の悪い行ないかと、恥ずかしくなったそうだ。
 娘婿の家では、煮魚でも焼き魚でも皮を残すのが普通らしい。「美味しい部分なのに、食べられないのが残念だ。」と娘が言う。
 私は急いで反論を用意した。魚の皮にはコラーゲンがあるし、そのすぐ下の脂肪にはDHAやEPAも多い。体にも良いし、何より美味しいので、捨てるのはもったいない。さくらももこも鮭の皮が好きだと書いていたはず。
 「結局は文化の違いなんよね」と娘はクールに片づけた。結婚は異文化との遭遇。異文化を尊重し合っていくことが結婚生活を存続させるコツである。結婚数十年の母が至らぬ境地に、娘は数年で到達したようだ。
 食事の場面には、家庭それぞれの文化が表れやすい。白いご飯の上に、おかずを乗せることが厳禁であったり、緩やかだったり。ご飯茶わんでお茶を飲むのが厳禁であったり、それが当然であったり。食事中の姿勢や会話も、家庭によって躾け方が違う。どれも異文化だと認めた上で、新しい家庭の文化を作っていけばよい。夫婦で話し合って。もしくは闘って。(舞)