老朽化した「ため池」は大地震だけでなく、台風や豪雨による増水でも決壊の危険性があり、津市でも津波とは関係ない中山間地域などで隠れたリスクとして認識されている。改修には長い期間と費用が必要で、ため池を管理する農家の高齢化が進んでいることからも決壊した際の浸水域を示したハザードマップの作成など、日常から該当地域の住民が情報を共有できるソフト事業の推進が求められている。

 

改修工事が進められている小古曽池

改修工事が進められている小古曽池

 ため池は取水をする都合上、集落や農地より高い位置に作られていることが多く決壊した場合、大きな被害が出ている。三重県内には農業用ため池が3159カ所あるが、江戸時代以前につくられたものが多く、耐震性の不足が問題となっている。
 昨年、県内の自治体が受益面積の広い2ヘクタール以上のため池2520カ所の一斉点検を実施。そのデータを県が客観的に分析したところ217カ所で緊急整備の必要性を認めた。更に決壊した際に、人的被害が予想される51カ所の整備を優先的に進めるとしている。
 しかし、ため池の整備には大きな費用と時間が必要で、県内でまだ35カ所のため池でしか耐震対策は終わっていないという苦しい実情が浮き彫りとなる。
 加えて、ため池を管理している農家が高齢化していることや、農村内に新たな住宅地が造成されて、集落の近くにため池があることすら知らない人が暮らしているケースなどが増加。日常から情報共有する手段が求められている。
 そこで県も、改修より短い期間で大きな効果が期待できるハザードマップの整備を自治体に勧める方針を打ち出している。
 前述の調査で、津市も市内にあるため池360カ所の調査を実施。現在、安濃町の小古曽池など、県営事業で現在耐震化工事を行っているものの、老朽化が進んだ池を全て改修するには膨大な時間が必要となる。
 現状、震度4以上の地震が発生した場合には、決壊で人的被害が出る可能性があるため池を担当職員が直接出向いて確認をするとしている。だが、対象が80カ所もあり大地震の発生時にいち早く駆け付けられるとは限らない。また、地震に限らず、最近、津市内でも大きな被害を出した集中豪雨や台風による増水での決壊も想定すると、地域住民が日頃から被害を想定した避難経路などを把握しておくという観点から、ハザードマップは必要となる。
 県内でも、中山間地の占める割合が多く、多くのため池を抱える伊賀市は、いち早くハザードマップの作成に取り組んでいる。市内50カ所の浸水予想地域や震度、避難地域などを示したマップを公開している。
 現状、津市はまだ整備には取り組んでいないが、今後、農家の高齢化が更に進めば、誰も管理していないため池が増えてくる可能性も高い。そういった意味でハザードマップの必要性は時を追うごとに早い整備が求められているといえる。
 対象となる地域が広く、甚大な被害が出やすい津波や洪水によるハザードマップは全国的にも整備が進んでいるが、それらと比べると被害にあう地域の狭いため池にまで手が及んでいない自治体も多い。
 県も今回の調査結果で緊急整備が必要なため池を抱える自治体に改修と共に、ハザードマップ作成の呼びかけを行うとしているが、国も対応に限界のある改修だけではなく、ハザードマップを始めとするソフト事業での対策を推進。地域住民が主体となった防災対策を呼びかけている。津市でもできる限り早期の作成に期待したい。