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15日・22日、津市大門地区やその周辺で行われた「第1回・津ぅのドまんかバル」は盛況のうちに幕を閉じた。街バルは共通チケットを使うと参加店舗でバル専用メニューが楽しめるというもので全国各地で開催され、注目を集めている。近年、「元気がない」と言われて久しい大門地区に両日は多くの人の姿が見られたが、今までのイベントと一線を画する地域振興にもなり得る街バルならではの魅力を実際に参加しながら探った。
街バルのバルとはスペイン語で酒場や食堂を意味する言葉。地域の飲食店を共通チケットで巡れるようにする催しで、新たな地域振興策としても注目されている。街バルブームの火付け役として知られる兵庫県伊丹市などが有名。三重県内でも尾鷲市などで開催されている。
バルを主催した実行委員会の実行委員長である増田芳則さん(34)は、三重県地方自治研究センターの研究員。津のローカルヒーロー・ツヨインジャーを立ち上げたり、市内のうなぎ店の情報をまとめたうまっぷを手掛けるなど、地域活性化に向けた様々な活動を続けている。
開催のきっかけとなったのは、今年5月に増田さんが尾鷲市の街バルに参加したこと。普段の街の様子からは想像できないほどのにぎわいぶりや各店舗の手厚いもてなしに感動。これを絶対に津でもやりたいと決意。大門地区の飲食店を中心に120店舗を一軒ずつ巡った。その後、趣旨に賛同した62店舗が集まり11月15日と22日の両日開催となった。実行委員会は同センターのほか、津市観光協会、津商工会議所、津市で構成。
システムを簡単に説明すると、5枚綴りで、前売り3000円、当日3500円のチケットを購入し、参加店舗で1枚ずつ切り離して使う。すると、一皿の軽食と飲物を基本とした各店自慢のバル専用メニューが楽しめる。チケットがある限り様々な店舗を巡れる仕組みだ。
初開催だけに人出が心配されたが、チケットが予想を大きく上回る1400組も売れたことからも地域の期待ぶりが伺える。
記者もチケットを手に、22日に各店を回った。初日の15日は、店舗に人が殺到し、混乱も見られたそうだが、この日は昼も夜もやや落ち着いた様子だった。
バルは昼と夜の両方楽しめる設定。お酒と食事だけでなくお菓子や刺身などテイクアウト商品と交換できる店舗もあったので、1冊のチケットで、家族へのお土産まで持って帰れるのは、嬉しい配慮だ。
店舗を回る参加者たちの中には「普段は、大門に余り来ない」と答える人が少なくなかった。その一方、地元で生まれ育った人たちからも「いつも行く店以外に入るきっかけができた」という意見も聞かれた。 地域活性化を目的に様々なイベントが催されているが、思ったよりも会場近くにある店舗の集客には繋がっていないという実情がある。しかし、バルの目的地は店自体。店舗側からは、この点を喜ぶ声が多数聞こえてきた。
チケットに描かれたカギの絵のイメージ通り参加者側は、気軽に〝未知の店〟の扉を開くことができ、参加店側にとっても、自店の雰囲気や味を、客に直接アピールでき、平時の集客にも繋げられるといった具合にメリットは大きい。
記者が回った店は、どこも充実したメニュー内容で、新規ファン獲得への熱意を感じるものばかり。気が付けば、あっという間に5枚を使い切っていた。
増田さんは両日の盛況ぶりを喜びながらも「元気がないという大門のイメージを変えるには、個店の頑張りではなく、地域で勝負する必要がある」と、地域をあげた取り組みの重要性を訴える。
今回のチケットの売り上げ総額から店舗への支払い分を引いた金額が次回の運営費として積み立てられている。既存の店舗を活用するので、野外イベントのように多数のテントを借りる必要はない。一度回り始めてしまえば、開催資金集めにも悩まされにくく、持続可能な運営ができるのも街バルならではだ。第2回は来年を予定。バル先進地では、継続的に開催されており、地域活性化にも一役買っているだけに津市でも今後の展開が非常に楽しみといえる。
2014年11月27日 AM 5:00