思いがけない失敗をしてひどく落ち込むことになった。
 私は里芋を煮ていた。シンクに散乱する皮を片づけつつ、火にかけた鍋を横目で見て味付けをと思った。鍋に一匙の砂糖を投入したとたんに、先に砂糖を入れたことに気がついた。砂糖が倍量。
 入れたことを忘れて再度入れてしまうなんて。毎日の料理に慣れすぎて、考えずに動いたのだろうか。寝ていたわけでもあるまいし、二度も入れるなんて。思考は堂々巡りをするばかり。自分の行動が信じられない。
 そういう時は、笑い飛ばすに限る。こんな失敗をしたと友人に吹聴し、一緒に笑うのだ。そして「あるある、私にも」と言ってもらえば、少しばかり慰めとなるだろう。
 コピーライターの糸井重里のサイトに「言いまつがい」というコーナーがある。言い間違いや、やり損いの投稿ページである。
 そこに出てくる他人の失敗は面白い。罪のない小さな失敗を読むと、砂糖倍量など何でもないと思える。甘過ぎる里芋もそれなりにおいしいし。
 三つのコンロに三つの鍋をかけながら、料理の出来上がりを同じにする。同時に魚も焼きあがり、シンクもきれいに片づいている。
 何の苦もなくできていたことが、近頃少しもたつく。それにしても砂糖倍量なんて。当分立ち直れそうにない。  (舞)