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国土交通省は、高所得ではない世帯向けに良質な住宅供給を行うため地方自治体が物件を認定する「地域優良賃貸住宅制度」を子育て中の世帯が活用しやすいように改正する方針を示している。少子高齢化と共に、加速度的に増えている空き家対策を盛り込んだ取り組みで〝一石二鳥〟を狙うが、三重県内では負担の大さを理由に、ほとんどの自治体がこの制度を活用していない。制度普及には大きな壁がありそうだ。
『地域優良賃貸住宅制度』は所得の低い人が対象の公営住宅と性格が違い、中堅所得者がメインターゲット。過去には「特定優良賃貸住宅(特優賃)」と、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」と呼ばれていたものが再編一本化され、現在は障害者や子育て世帯も対象になっている。
制度の内容を簡単に説明すると……制度を通じ、自治体と契約を結んだ事業者が新築物件の建設や既存物件の建設・改良を行うと、国と地方から、整備費の助成が受けられるというもの。もちろん、自治体自身が整備することもできる。
入居者側にとって制度を活用するメリットは、世帯収入や家族構成などに応じて、国と地方自治体が家賃の一部を一定期間、補助してくれること。
国交省は、この制度を更に活用し、近年、ニーズが増加している子育て世帯向け住宅を進めようと来年度の予算の概算要求に必要経費を盛り込んでいる。これまでは、共同住宅の共用部分やバリアフリー化に限られていた助成範囲を拡大。子供の事故防止のための階段の手すりや滑りにくい床材なども対象にした。この改正で、全国の自治体に民間の空き家を借り上げ、子育て世帯が住みやすくする整備を進めるよう促す方針だ。
この背景には、全国に820万戸あり、住宅総数の13・5%を占めている空き家問題解消への期待も込められている。将来的に国を支えていく子育て世帯を支援する意義も大きく〝一石二鳥〟という訳だ。
しかし、三重県内に目を移してみると、そう簡単にはことが運ばないことが分かってくる。現状、三重県内では、この制度を活用している物件は、四日市市と伊勢市にある3つの共同住宅49戸のみ。つまり、制度がほとんど活用されていないことがわかる。
事業者は、制度を活用する際、自治体と最大20年の管理契約を結ぶ。その間、自治体が入居者に対する家賃補助を行うのだが、その補助は毎年少しずつ減額していく。物件が古くなり入居者の確保が難しくなるにつれ制度の恩恵も失われていくというわけだ。事業者側にとっても安易に手を出しづらい内容になっている。
更に、整備や家賃の補助に対する支出の割合は国が45%、地方が55%となっている。三重県では、平成16年より、これに対する県の補助がなくなったため、全額を市町が負担しなければならない。財政が逼迫する中、既存の市営住宅などの維持管理費用の捻出にすら苦慮している市町も多い。今回の改正がなされても、制度を積極的に活用していく県内の市町は非常に限られるとみられる。
改正の発想自体は悪くないが、この制度の活用を全国の自治体に呼び掛け、空き家対策にも力を入れるというのならば、地方の負担を下げるなど、現実を踏まえた改正が求められることとなろう。
2014年11月20日 AM 4:55
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