いすみ鉄道のムーミン列車

いすみ鉄道のムーミン列車

 11日・12日の両日、津市商工会(服部基恒会長)の「ふるさと鉄道『JR名松線』と連携した地域活性化プロジェクト委員会」=中田かほる委員長=の委員ら11名が千葉県房総半島の第三セクター「いすみ鉄道」を視察研修、鉄道を利用した観光開発による地域活性化を学んだ。
 松阪駅と津市美杉町の伊勢奧津駅を結ぶJR名松線は現在家城駅~伊勢奧津駅間が代行バスで運行されており、27年度末に全線復旧の見込みだが、問題はそれ以降。津市商工会では沿線経済団体の立場で名松線を活用した地域活性化の方策を探ろうと、全国商工会連合会の地域内資金循環等新事業開発検討事業の認定を受け、8月、名松線を元気にする会や津ガイドネットなど組織外からも委員を求め同委員会を発足させ、地域づくりの専門家を交えて検討している。
 その中で注目したのが1988年に房総の旧国鉄木原線(26・8㎞)を引き継ぎ営業開始した地元行政などによる3セク「いすみ鉄道」。沿線人口の減少に伴う利用客減による慢性赤字に苦しみ、廃線論議が出る中、09年に第2代公募社長に元英国航空会社旅客運航部長・鳥塚亮氏を迎えて観光路線化を進め、『ムーミン列車』や全国で唯一残存する旧国鉄型ディーゼルカー(キハ28と58)を運行。ホタル鑑賞や地元食材を使ったレストラン列車、夜行列車などユニークな企画列車の運行などによる普通客増や、オリジナルグッズ・地元産品などの物販による地域経済への波及効果も生み出している。
 委員会では事前に鳥塚社長の著書を読み、いすみ鉄道を取材したTV番組を観るなど事前勉強をした上で現地訪問。初日は伊勢海老特急に出す料理を担当している『ヴィラそとぼう』に宿泊。地域創造研究所・松本圭史所長を講師に、名松線を活用した地域経済活性化プロセスの検討や、いすみ鉄道視察のポイント確認を行った。また女将から効果や現状なども聴取した。
 翌日はムーミン列車に乗り、大多喜駅のいすみ鉄道本社を訪問。山口一衛総務部長らから昼食を挟み3時間にわたって同鉄道の取り組み、ジャズ列車など貸し切り列車の運行や駅構内・沿線の花壇整備などを行っている沿線住民と鉄道ファンによる『いすみ鉄道応援団』=会員140名=の活動などを詳しく聞き質疑応答、機関庫で整備中のレストラン列車も見学した。
 名松線を活用した地域経済活性化には、津市商工会が中心となった飲食・物産のビジネス集団の立ち上げと、JR東海の理解・協力が不可欠。越えるべきハードルは低くないが、中田委員長は「いすみ鉄道さんを見学させて頂き、私達が温めてきた観光列車の社会実験につなげていけそうな気がしてきた。鉄道会社、沿線住民、鉄道ファンなどみんなが頑張っている姿を感じる。自分達だけではできないので、いろんな人を巻き込んで活性化させていきたい」と意欲的だ。

 国土交通省は、高所得ではない世帯向けに良質な住宅供給を行うため地方自治体が物件を認定する「地域優良賃貸住宅制度」を子育て中の世帯が活用しやすいように改正する方針を示している。少子高齢化と共に、加速度的に増えている空き家対策を盛り込んだ取り組みで〝一石二鳥〟を狙うが、三重県内では負担の大さを理由に、ほとんどの自治体がこの制度を活用していない。制度普及には大きな壁がありそうだ。

 

 『地域優良賃貸住宅制度』は所得の低い人が対象の公営住宅と性格が違い、中堅所得者がメインターゲット。過去には「特定優良賃貸住宅(特優賃)」と、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」と呼ばれていたものが再編一本化され、現在は障害者や子育て世帯も対象になっている。
 制度の内容を簡単に説明すると……制度を通じ、自治体と契約を結んだ事業者が新築物件の建設や既存物件の建設・改良を行うと、国と地方から、整備費の助成が受けられるというもの。もちろん、自治体自身が整備することもできる。
 入居者側にとって制度を活用するメリットは、世帯収入や家族構成などに応じて、国と地方自治体が家賃の一部を一定期間、補助してくれること。
 国交省は、この制度を更に活用し、近年、ニーズが増加している子育て世帯向け住宅を進めようと来年度の予算の概算要求に必要経費を盛り込んでいる。これまでは、共同住宅の共用部分やバリアフリー化に限られていた助成範囲を拡大。子供の事故防止のための階段の手すりや滑りにくい床材なども対象にした。この改正で、全国の自治体に民間の空き家を借り上げ、子育て世帯が住みやすくする整備を進めるよう促す方針だ。
 この背景には、全国に820万戸あり、住宅総数の13・5%を占めている空き家問題解消への期待も込められている。将来的に国を支えていく子育て世帯を支援する意義も大きく〝一石二鳥〟という訳だ。
 しかし、三重県内に目を移してみると、そう簡単にはことが運ばないことが分かってくる。現状、三重県内では、この制度を活用している物件は、四日市市と伊勢市にある3つの共同住宅49戸のみ。つまり、制度がほとんど活用されていないことがわかる。
 事業者は、制度を活用する際、自治体と最大20年の管理契約を結ぶ。その間、自治体が入居者に対する家賃補助を行うのだが、その補助は毎年少しずつ減額していく。物件が古くなり入居者の確保が難しくなるにつれ制度の恩恵も失われていくというわけだ。事業者側にとっても安易に手を出しづらい内容になっている。
 更に、整備や家賃の補助に対する支出の割合は国が45%、地方が55%となっている。三重県では、平成16年より、これに対する県の補助がなくなったため、全額を市町が負担しなければならない。財政が逼迫する中、既存の市営住宅などの維持管理費用の捻出にすら苦慮している市町も多い。今回の改正がなされても、制度を積極的に活用していく県内の市町は非常に限られるとみられる。
 改正の発想自体は悪くないが、この制度の活用を全国の自治体に呼び掛け、空き家対策にも力を入れるというのならば、地方の負担を下げるなど、現実を踏まえた改正が求められることとなろう。

「一志じねんじょ」と村上さん(左)ら

「一志じねんじょ」と村上さん(左)ら

 明日21日からJA三重中央管内で、津市一志地区の特産品である『一志じねんじょ』の出荷が始まる。
 「一志じねんじょ」は、自生している自然薯と変わらないほど強い粘り気が特徴で、同JAの営農センター一志での直売や、全国宅配が行われており、お歳暮など贈答用としても人気。今年は12月25日頃までに約1tを出荷予定。
 7日、出荷に向け、同JA波瀬支店前のじねんじょ集荷場で同JAの「一志じねんじょ部会」=村上勉部会長(67)、部会員20名=の目揃え会があり、出荷要領や出荷規格の確認が行われた。
 村上部会長は「今年は8月まで雨が多く心配したが9月から晴れの日が多く、順調に育った。風味も山のものと変わらず、栄養豊富です」と話している。
 販売価格は1㎏化粧箱入りで税込3090円。なお12月7日、同センターで「一志じねんじょ祭り」が開催され、おとし汁のふるまいなどが行われる。問い合わせは☎津293・0282。

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