着ていたコートのポケットに手を入れたら、何かが触った。出してみると、わさびの入った小さな袋だった。「こんなものを」と苦笑する。
前回このコートを着た時、回転寿司に行った。食べ終わったテーブルに未開封のわさびが一袋残っていて、それをポケットに入れたのだ。傍目にはけち臭い行為であるが、時々こういうことをしてしまう。
言い訳をさせてもらえば、わさびが買えないからではない。わさびの袋をそのままにしたら、ゴミ箱に入れられるに違いない。食べ物を無駄にしてはバチが当たると祖母に躾けられたからだ。
ところがそのわさびが、一週間もポケットの中にあっては無意味である。私のやることはいつも少々抜けている。
そんな私だが、マヨネーズや味噌の容器は隅々までこそげとる。食べ物だけではない。洗剤やシャンプーが出てこなくなったら、容器に水を入れて使い切る。練り歯磨きの最後は、チューブを切って中身を出し、蛇口のステンレス磨きに使う。そこまでする理由もけちだからではない。プラスチックごみの内容物を減らしたいから。そして、物の命の最後まで使いたいから。
どこかの誰かが作り、何かの役に立つはずの製品が、その使命を全うできずに捨てられてはもったいない。底の底まで使い切るのがマナーだと信じているのだ。 (舞)