松阪駅と伊勢奥津駅を結ぶ『JR名松線』が3月26日、約6年半ぶりに全線復旧。現在、県内外からの利用客で賑わっているが、将来にわたり存続させるためには観光路線化が欠かせない。そこで、全15駅中、12駅がある津市では、駅と名所を繋ぐ臨時バスの運行などで誘客に取り組んでいるが、各駅から沿線の名所への交通の便や、官民の連携体制には未だ多くの課題があり、より積極的で迅速な施策が求められている。

 

観光路線化が課題となっている「JR名松線」

観光路線化が課題となっている「JR名松線」

名松線は平成21年10月の台風で被災し、家城駅(白山町)~伊勢奥津駅(美杉町)間でバスによる代行輸送が行われていたが、3月26日全線復旧した。
同線は沿線の人口減少などの影響で元々利用者が少なく、被災前の同区間の利用者は1日平均90人。一時は同区間の鉄道輸送廃止が危ぶまれたが、住民らが全線復旧を望む署名活動を実施。同23年、JR東海・三重県・津市が運行再開に向けた3者協定を締結し、県・津市が治山事業と水路整備事業、JR東海が鉄道の復旧工事を行い、全線復旧が実現した。
4月中旬の同区間の一日の利用者は被災前の約3・3倍に増え賑わいは今も続いているが、将来にわたり同線を存続させるためには観光路線化が最重要。
JR東海の柘植康英社長も、復旧当日に開かれた記念イベントで「これから沿線の観光資源を生かし、県・市・地元の方、色々な方の知恵をお借りして、一人でも多くの方にお乗り頂きたい」と話している。
そこで津市では鈴木洋一美杉総合支所長が「都市計画部名松線推進担当参事」を兼任し、同支所が「名松線利活用関係事業」を担当することになった。同事業の今年度当初予算は604万5千円で、補助事業やイベント、三重テラスでのPR活動などを行う。
GWには公共交通が不便な伊勢奥津駅~北畠神社を結ぶ無料臨時バスを10日間運行し、利用者は計2166人と好評。市は6月議会に提出する一般会計補正予算案に、8月~11月の計15日間、同コースで無料バスを運行する費用として100万6千円を盛り込んだ。
しかし、無料バス運行期間を除いた通常期間では、伊勢奥津駅や町内のほかの駅から周辺の名所への公共交通は不便で、観光路線化を目指す上で大きな課題となっている。
同駅前など町内3カ所に市のレンタサイクルが設置されているが、高齢などで体力があまりない人には利用しづらい。
また都市計画部交通政策課では、美杉町のコミュニティバスの一部ルートのダイヤを改訂し名松線のダイヤに連動させることを予定しているが、地域住民の足という性格上、コミュニティバスで観光客向けの交通アクセスを根本的に解決するのは、調整が相当難しいのも事実。
このように難しい課題を全線復旧が決まってからすぐに検討されるべきだったが、市の対応は後手に回っている。GWの臨時バス運行も、市民からの「連休で多くの観光客が見込めるのに、伊勢奥津駅から多気方面の名所への公共交通が不便」という指摘を受け、直前に決まったものだ。
更に、観光路線化を目指す上での行政と民間の連携体制も不十分。津市は県・松阪市と共に「JR名松線沿線地域活性化協議会」=
事務局・津市交通政策課=を発足したが、今年度の事業内容は6月3日時点で未定。名松線の活性化に関して、この3者や沿線の市民で構成された団体は現在存在せず、この状態では官民一体での長期的な取り組みは難しい。
鈴木支所長は、「利用者の増加が一過性にならないように美杉の観光PRをしていきたい。お客さんの需要を踏まえながら、来年度の臨時バス運行についても検討したい」としている。
同線活性化において前葉市長も言い続けてきたように、復旧は終わりではなくスタート。市が鉄道愛好家や観光ガイドなど同線や沿線のことを熟知する市民と知恵を出し合って同線に新たな付加価値を見出し、潜在需要を積極的に掘り起こすことが成功の鍵となる。
逆に被災前と同じような取り組みしか行なわなければ、近い将来、名松線は再び衰退するだろう。
担当職員一人ひとりに危機感と責任感が求められている。

昭和の名曲やアニメソングも演奏されたジャズコンサート

昭和の名曲やアニメソングも演奏されたジャズコンサート

趣のある伊勢本街道奥津宿で行われた散策ツアー

趣のある伊勢本街道奥津宿で行われた散策ツアー

5月29日、津市美杉町奥津で、『名松線で行こう!田舎のジャズコンサート&新緑の伊勢本街道散策ツアー』が開かれた。市民活動団体「名松線を元気にする会」と、津市白山町を中心に活動するジャズビッグバンド「Jazz Band HAKUSAN」の共催。
先月のGWに大勢の人が同線に乗り美杉町を訪れたことも踏まえ、「この勢いがなくならないように」と、全線復旧後の同線の賑わいを持続させるために行われたもの。事前の告知活動を熱心に行った甲斐もあって、参加者は約350人にのぼり、しかもその多くが同線に乗って来場した。
当日は、伊勢奥津駅前で列車で到着した人々を同バンドのメンバーが演奏で歓迎。また、同駅前にあるNPO法人の施設「コルチカムの里」では、同バンドが「田舎のジャズコンサート」を開催し、銀河鉄道999などを披露。同ツアーでは、参加者が同会のメンバーの案内のもと奥津宿を歩き、宿場町として栄えた当時の様子に思いをはせていた。
同会では「ジャズが流行した時代を知る世代の観客には、演奏を聴いて懐かしむ人もいました。今後も、名松線と、昭和の懐かしいジャズのコラボをPRしていきたい」としている。

辺り一面に咲き乱れるあじさいの花

辺り一面に咲き乱れるあじさいの花

津市戸木町の伊勢温泉ゴルフクラブ内にある福祉と環境を融合した花園「かざはやの里」で恒例の『あじさいまつり』が開かれ、見頃を迎えている。
老人福祉施設や障害者福祉施設を運営する正寿会が平成16年に同ゴルフクラブの約半分の土地を改造して作った同施設には、アジサイ56種7万5千株が植えられている。
花園の管理は、同会が運営する障害者施設の職員や利用者たちが行っており、オフシーズンには株をネットで覆ってシカの食害からアジサイを守りながら、枝の剪定や草刈りなどに取り組んできた。
青・赤・白と色ととりどりの花が視界いっぱいに咲き乱れる光景は圧巻で、遅咲きの品種まで期間いっぱい楽しめる。期間中はスタンプラリーなど常時開催イベントのほか、土日にはライブなど様々な催しも実施する。11日(土)11時~15時・「癒しの音楽の日」…生演奏。12日(日)10時~16時・「藤堂高虎を偲んで~」…クイズや太鼓演奏。このほか、キッチンカーなど盛りだくさんの内容。19日(日)10時~15時には、かざはやの里のあじさいと2016年度津クイーン撮影会も。
入場には利用者たちへ支援費として300円が必要(18歳未満や障害者手帳を持っている人は無料)。開園は10時~17時。問い合わせ☎津255・5755。

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