津市では、4月より『津市空家管理台帳システム』の本格運用を始めており、担当部署が台帳の登録情報を共有しながら倒壊の恐れのある空き家や雑草が茂る空き地などへの対応を行っている。特に危険な家屋を「特定空家等」に認定し、所有者に解体などの然るべき処置を促しているが、行政の対策だけでなく住民サイドの意識改革も空き家対策にとって非常に重要であることが浮き彫りとなっている。

 

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年度で全国の空き家は約820万戸で空き家率は13・5%。これに対し、津市の空き家数が約2万7060戸、空き家率は19%という結果が出ている。
そこで津市は昨年の空家対策特措法の施行に先んじ「津市空家等管理台帳」の作成に向けた外観調査を実施。そこで空き家と判明した3924戸を台帳に登録し、所在地・所有者・登記情報(建物・土地)といった情報を空き家対策に係わる市役所内の環境保全課・建築指導課や、各総合支所などで共有。迅速な対応を行うために活用している。
特措法の施行に伴い、大々的な報道がなされたこともあり、身近な空き家問題に対する市民の関心が高まっている。空き家の近隣住民からの相談件数も増加しており、平成25年度33件、平成26年度51件と比べて、特措法が本格施行された平成27年度は99件とその差は歴然といえる。損壊しそうな家屋と共に相談が多いのは空き地(空き家の敷地含む)の雑草の繁茂で平成27年度で512件もあった。
台帳に登録されている空き家のうち、特に倒壊の恐れ(道路に面している家屋で屋根瓦が落ちそうな場合なども含む)があったり、著しく衛生上や景観上の問題となっているものを「特定空家等」に認定している。特措法に基づき、この特定空家等に認定された後に行政から勧告を受けると住宅地に対する税の優遇措置が外されたり、最終的には解体などの行政代執行(費用などは持ち主に請求)を行うことができる。津市では5月末現在で38戸の特定空家等の認定があり持ち主が解体に応じたのが5戸、勧告の前段階である指導が4戸、改善のために所有者と接触中が12戸、所有者の確定中が15戸、残る2戸は所有者が対応したものの十分とはいえない一部改修済みととなっている。
特措法によって税情報を利用できるようになったので所有者と接触をとり易くなった一方、浮き彫りとなっているのが未登記や、相続時に登記しなおされていない空き家の問題だ。
中でも何代も前に相続が発生していると相続人の数は膨大で、一度もその場所へ行ったことがないどころか、市からの報せを受けて初めて法的に自分の持ち物となっていることを知る人もいるという。更に土地と建物で所有者が別というケースもあり、その上で建物の登記がされていなかったり、登記が書き換えられていないと所有者を突き止めるのは困難となる。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題も取りざたされる中、この問題の深刻化はほぼ確実。行政が問題のある空き家の持ち主に対して、適切な管理を促すだけでは限界がある。
そこで求められるようになっているのが問題発生に先んじた市民側の行動である。将来的に相続が発生した場合に現在住んでいる家がどうなるのかを想定した上で登記や土地・建物の処分など然るべき対応をとる準備が重要。市民側の意識改革も求められている。
空き地・空き家についての相談は津市環境保全課☎津229・3398。