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カシノナガキクイムシ(カシナガ)が媒介する菌類の通称ナラ菌によってナラ(ミズナラ・コナラ)・カシ・シイ類などの広葉樹が大量に枯死する伝染病『ナラ枯れ』。津市では3年前、松阪市では昨年より被害が確認されており、今年も山間部を中心に発生。これらの木は土砂災害の防止や水源涵養機能など、多面的な役割を果たしているものの、木材としての価値が低いこともあり、対策が進んでいないのが実情だ。
夏の日差しを浴びて青々と生い茂る山の木々。目を凝らすと紅葉の時季にはまだ早いのに、茶色く葉が変色した一帯を見かけることがあるはず。それがナラ枯れだ。津市では白山町など山間地域を中心に至るところで見かける。
ナラ枯れ発生のメカニズムを簡単に説明すると…①6~7月に、健全なナラ類などの木にカシナガのオスが穴をあけて侵入②7~8月、そのオスが出す集合フェロモンに誘因された多数の成虫が同様に穴をあけて木に侵入(マスアタック)③8月~、メスが持つ菌の胞子を貯蔵する器官から穴に病気の原因となるナラ菌が蔓延することで木が通水機能を失い急激に枯れる④9月~、卵からかえった幼虫は穴の中で育てた酵母類を餌に成長を続けながら越冬する⑤6月~、穴の中で羽化した成虫がナラ菌を持って飛び出し周囲の木に侵入する。このサイクルが繰り返されることによって、ナラ類の集団枯死が起こる。被害木は虫が侵入した1・3㎜~1・8㎜程の穴と共に、大量の木くずと糞が交じり合ったフラスが見られるのが特徴。
国内では90年前後より被害が目立つようになり徐々に被害範囲が広がっていった。三重県内では99年に熊野地域で初めて被害が確認され、現在では森林が存在しない木曽岬町と川越町を除く全ての市町で被害が確認されている。津市では13年、松阪市では15年に被害が発生している。
被害によって森林の中でナラ類などの広葉樹が果たしている土砂災害などの防止や水源涵養機能の低下などが危惧されている。また枯死した木が放置されていると場所によっては、枝が落ちたり、木そのものが倒れることで人的な被害や道路などのインフラに悪影響を与える可能性も。加えて公園や寺社仏閣、景勝地の木が被害にあった場合などは、著しく景観が損なわれたケースもある。
予防・防除自体は薬剤の樹幹注入や木の幹をビニールで覆ったり、被害木を倒して燻蒸するなど、シンプルな手段が多いが裏を返せば、人手や費用が掛かるものばかり。スギやヒノキと比べると、ナラ類の材木は市場価値が低く、対策に見合う利益が得られないこともあり、地権者が被害木を放置するケースが多い。
ナラ枯れ発生の大きな要因としてはナラ類の大木化が挙げられる。古来より日本では、薪や木炭の材料としてナラ類を定期的に伐採し、それが木々の更新にも繋がっていた。しかし、60年代の燃料革命によって木が伐採されることが無くなり放置されたため、カシナガが繁殖しやすい大木が増加。一気にナラ枯れの被害が広がったという構図だ。
理想を言えば最も有効な対策は、このサイクルの復活だが、木質バイオマス発電の燃料チップ化などを考慮しても今のところは余り現実的といえない。それよりは、問題の深刻化の前に観光資源や文化的価値が高い守るべき森や木を行政が見定めたり、枯死した木が倒れて周囲の道路・線路などのインフラや周辺住民の生活に影響を与えそうな場合は、いちはやく伐倒するよう地権者に理解と協力を求めるなどの対策が重要。
ナラ枯れ被害は全国的には減少傾向で、その要因として、一定期間でカシナガの繁殖に適した大木が全て枯れてしまったことが挙げられている。一方、津市や松阪市での被害は発生したばかりで、被害の拡大も予想されるだけに、注視すべき状況が続いている。
2016年8月25日 AM 5:00
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