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厚生労働省は受動喫煙防止の強化を目的に飲食店や官公庁などを屋内禁煙とし、違反者には罰則規定を盛り込んだ案を公開している。大きな影響を受ける飲食業界やたばこ産業などからも強く反対の声が上がっており、どのような形で帰着するのかはわからないが、この現状に対して津市内でも様々な声が聞こえてくる。
喫煙者の総数はJTの調べによると2016年5月末で19・2%。年々、減少の一途を辿ると同時に、他人の煙草の煙による健康被害が危惧される受動喫煙防止の動きは加速。主要先進国と比べると取り組みが遅れているという理由もあり厚生労働省は東京五輪・パラリンピックに向けた対策を強化。今国会に提出をめざす法案では喫煙が禁止されている施設の管理者に喫煙禁止場所であることの提示を求めると共に、それを無視する喫煙者に30万円以下の過料、更に義務を果たさなかった飲食店などの施設管理者に50万円以下の過料を求める内容が示されている。これに対し、津市内でも賛否の声が出ている。
特に影響が大きいとみられるのは飲食店。法案では食堂・ラーメン店・居酒屋・焼き鳥屋など、食べ物を中心に提供する業態の飲食店は、喫煙室の設置は認められているものの、テラス席は屋外でも禁煙になるなど、かなり厳しい制約が記されている。昨年末にオープンしたばかりの津市内のカフェ&バーでは、ランチタイムは禁煙だが夜は喫煙可というスタイル。店主Pさんは「常連さんにはお酒と共に煙草を楽しむ人も多いので、そのまま成立したら厳しい。喫煙室の設置もスペース的に難しい」 と危惧する。このように料理と共に酒を味わいながら、ゆったりと煙草をくゆらせる常連客に支えられているという店の店主らは死活問題と口を揃える。
だが、その一方で非喫煙者の増加や居酒屋や焼き鳥屋にも家族連れの客が増えていることから、法案を歓迎する声も少なくない。津市内のラーメン店のYさんは「オープン当初から完全禁煙。自分も吸わないので気にはならない」と話すように、飲食業界でも客層や業態によって賛否がはっきりと分かれているのが実情だ。同案では30㎡以下の小規模なスナック・バーを例外とし喫煙を認めているが、同じ業態でも規模で喫煙可能かどうかが分かれる点も異論が出そうだ。
学校や病院は敷地内完全禁煙。官公庁や大学も屋内禁煙で喫煙室の設置も認められない。津市役所では、1階と8階などに喫煙室があり、来庁者や職員が利用している。設置当時は換気扇で煙を外に排出するだけだったが、JTの指導で一定の基準を満たす空気清浄機を通してから屋外へ空気を排出するなど、分煙の取り組みを進めている。現状では非喫煙者からの苦情はほとんど寄せられていないという。案では喫煙室がある場合は一定の基準を満たせば5年の猶予期間が認められるとされているが、一時的なものに過ぎない。屋外に喫煙スペースを設けるにしても、市庁舎の周囲に設置可能な空間は限られており、煙が風で流されれば、結果として分煙している現在よりも受動喫煙が増える可能性も否めない。非喫煙者にもメリットが無ければ本末転倒も甚だしい。
また、案が成立すれば、地方の大きな財源であるたばこ税への影響も確実。津市でも、平成27年度の市たばこ税の税収は約18億3千万円。来年度も16億8千万円を見込むなど、依然として軽自動車税の約3倍に及ぶ財源になっている。受動喫煙が原因とされる死者が全国で年間約1万5000人に及ぶと言われ、喫煙が原因の医療費支出を抑えられるとすれば、単純な財源とは言い切れないが、行政にとって〝痛し痒し〟が本音だろう。
もちろん、受動喫煙防止という趣旨は正当で、県内でも最も外国人宿泊者数が多い津市にとって国際的に通用するルールづくりも重要と言える。たばこ産業や飲食業界の反対を受け、自民党などが反対の声を上げており、法案がどのような形で落ち着くかは分からないが、非喫煙者と喫煙者とそれを取り巻く人々にとって大きな影響のある問題だけに禁煙や分煙の線引きなど、議論の余地が残されているといえよう。
2017年3月9日 AM 5:00