地域住民でつくる「自主防災組織」のリーダー育成などを目的に、平成19年度から毎年開講している「津市民防災大学」(事務局=津市危機管理部防災室)。28年度までに238名が修了し、うち86名が25年度末に始まった同大の「人材バンク」に登録しているが派遣実績はなく、卒業生と地域のマッチングが課題となっている。そこで市は今年度の講義を通じ解決方法を検討し、来年度から同大の事業を一新する予定。

 

昨年度の津市民防災大学のチラシ

昨年度の津市民防災大学のチラシ

自治会などが任意でつくる「自主防災組織」は、災害時に地域住民が助け合う「共助」の軸となる組織で、防災訓練や被災者の救出・避難誘導などを行う。阪神淡路大震災を教訓に全国で設立が進み、津市の組織率は98・1%に上るが、結成したものの活動が停滞しているグループも少なくない。しかし約1年前の熊本地震で改めて明らかになったように、自主防災組織が活性化し災害時に機能を発揮するには、グループを引っ張るリーダーの育成や住民の防災意識向上が重要。
そして今年度で第11期目を迎える「津市防災大学」は、この課題解決に大きな役割を担っている。
実施主体は市職員や卒業生など官民でつくる実行委員会で、対象は市内在住・在勤・在学の人。昨年度は10月~2月に8回開講し、川口淳三重大学准教授の南海トラフ巨大地震に関する講義や、災害時をイメージしながら歩くタウンウォッチングなどが行われた。地域での防災活動の入り口となっており、19年度~28年度までに238人が修了。
しかし、卒業生が地域と繋がりを持ち、講義で学んだ知識を生かし防災活動を行うための仕組みが不十分で、懸案となっている。
市は、対策として全修了生のうち希望者が登録する「津市民大学 人材バンク登録者名簿」を25年度末に作成し、津市防災ホームページで公開。自治会・自主防災組織・事業所などから依頼を受け、市の仲介で登録者を派遣するというシステムで、28年4月9日現在で86名が登録しているが、問い合わせは少なく、現在まで派遣実績はない。
大きな原因は、同ホームページ以外で名簿についてPRを行っていないこと。また名簿には、登録者がどのような防災活動ができるのかが記載されていない。
一方、卒業生が自力でより発展的な防災活動に取り組んでいる例もあり、その一つが27年4月に発足した団体「津市民防災ネットワーク」=朝倉玲子代表。地域で防災活動を実践しているメンバーが毎月1回、定例会議を開き情報共有や勉強会などを実施。会議には同部の職員も出席し、卒業生と行政が交流する貴重な場となっている。
市の対応は後手に回っていたが、ついに、同大の事業が今年度を一区切りとして、来年度から一新されることとなった。講義の中で「受講生が修了後にどのように地域で活躍できるか」と、「地域住民が防災活動に求める人材」のマッチングを目指していくという。
リニューアルの具体的な内容は今年度10月頃~来年2月頃に開講する第11期の講義を通じ検討する予定で、防災室は「今年度は、例えばタウンウォッチングを卒業生も一緒にしたり、地元の自主防災組織の会長と受講生の交流の場をつくることを考えている」としている。受講生は防災の初心者が多いため、地域・行政と連携し防災活動を実践するには、受講中だけでなく卒業後のサポートも重要。そのため新事業には、例えばフォローアップ講座など、卒業生を対象とした人材育成の継続的な取り組みが欠かせないだろう。