空き家の増加は社会問題となっているが、津市でも特に危険な家屋を「特定空家等」として認定し、持ち主に解体など適切な管理を促すなど様々な対策を講じている。また7月からは、美杉町で行ってきた「空き家情報バンク制度」の対象を全市域に広げ、利活用の面からも対策を講じているが、未登記空き家の所有者特定の困難化などもあり、今後、少子高齢化の進行に伴って問題が加速・深刻化しそうだ。

 

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年度で全国の空き家数は約820万戸で空き家率は 13・5%という結果が出ており、それに伴い「空き家対策特別措置法」が一昨年に制定されている。
この法律によって、全国の市町村が危険な空き家を「特定空家等」に認定することができ、段階を踏めば住宅に適用される税の優遇制度を外したり、最終的には解体などの行政代執行(かかった費用は持ち主が負担)を行うことができるようになった。
津市も同法施行に合わせて「津市空家管理台帳」を整備。外観調査を実施し、市内の3924戸を台帳に登録。所在地・所有者・登記情報(土地・建物)などの情報を空き家対策に係わる部署や各総合支所で共有することで迅速な対応を行う体制を構築している。特措法の施行以来、空き家問題を扱う報道も飛躍的に増加していることもあり、市民の空き家に対する関心も高まっている。同法施行前の平成25年度が33件だった相談が昨年度では111件まで増加。今年度も5月末で11件の相談が寄せられている。
台帳に登録されている空き家のうち、特に危険で倒壊の恐れや周辺住民に被害を与えたり、著しく景観や衛生上の問題となっているものの「特定空家等」への認定も積極的に実施。外観調査と市民からの相談によって151件が認定を受けている。持ち主との協議の末に解体などの改善に至ったのが20件、法に基づく指導を受けたのが8件、税の優遇措置が受けられなくなる勧告を受けたのが1件、改善に向け所有者と協議中が36件となっているが、一番多いのは所有者確定調査中の87件。
特措法によって税情報を使って空き家の所有者とコンタクトを取り易くなっているが、それに伴って浮上しているのが相続や未登記によって所有者の特定ができない空き家の存在だ。特に相続の場合、代を重ねるほど、相続人の数が膨大となり、津市でも空き家の相続人が北海道や沖縄で暮らしており、自分が相続していることすら知らなかったというケースも発生している。
土地と建物の登記が別名義の場合は、より所有者の特定が困難になっている。空き家は個人の財産である以上、所有者全員の許可を得ないと対応ができず、今後もこの問題は増え続けることが確実なことを考えると、国が新たな法整備などを行うことがあるのは明白だ。
いわゆる空き家問題は、近隣住民の生命にもかかわることにも繋がりかねないだけに、確実な対応が求められるが、言わば対症療法に過ぎず、空き家が使えるうちに利活用を促す施策と両輪と言える。そのような施策としては、津市は三重県宅地建物取引業協会などと連携し、美杉町内の物件を田舎暮らし希望者に紹介する空き家情報バンク制度である程度の実績を上げてきた。そこで、来月に新たに協定を結び、同制度の対象を市全域まで広げる予定だ。また三重県の施策で移住促進のための空き家リノベーション支援事業補助金を行っており、県外からの移住者が空き家の改修を行う場合に補助金を出している。しかし、この制度は県内全域でもまだ利用者が少なく、津市での利用例もまだない。
特効薬と呼べるような対策は今のところ無く、行政は相続に伴う登記の確認や適正管理について改めて呼びかけたり、相談会を開くなど地道な施策が中心となる。また、空き家問題は持ち主側の責任であることは間違いないが、解体に応じない人の大部分が、費用の工面に苦慮をしているという現実もある。今後、ますます高齢化が進む中で我々にとって、もっとも身近でもっとも頭を悩ませる問題へと発展していくことは確実だろう。