この時期、津市内でも様々な場所で黄色い鮮やかな花を咲かせているのが、移動・栽培などが法律で禁じられている特定外来生物「オオキンケイギク」。その他にもブラックバス、ウシガエルなど、身近な特定外来生物も多いが駆除は容易ではない。日本固有の生態系を脅かす問題にも繋がる問題の根本は、安易に外来生物を自然へ放つ行為にある。市民一人ひとりが外来生物とどう向き合うか考えるべきであろう。

 

特定外来生物「オオキンケイギク」

特定外来生物「オオキンケイギク」

津城跡にも多数生息する「アカミミガメ」

津城跡にも多数生息する「アカミミガメ」

コスモスにも似た黄色い花を咲かせる北米原産の「オオキンケイギク」。生命力が強いため、行政が法面緑化に活用していたが、繁殖力の強さから全国で野生化。日本の在来種を脅かし生態系に悪影響を与える可能性がある特定外来生物に指定されており、全国各地で行政や民間団体が駆除活動を行っている。
特定外来生物に指定されると飼育・栽培・繁殖・移動などが厳しく制限され、国の許可を受けずにこれらを行った場合は個人でも3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられる。
その他の身近な特定外来生物としては、スポーツフィッシングの対象として人気のブラックバス(オオクチバス・コクチバス)や、ウシガエルなどが上げられる。これらは捕獲しても生きたまま移動すると、厳しく罰せられる。
ちなみに、津市への相談が多いのは有毒のセアカゴケグモ、次いで農業被害や住宅への侵入被害が出ているアライグマと実害が出るものばかり。生態系に悪影響を与えるタイプの特定外来生物は、ほとんどの市民が、それと意識をせずに過ごしていると言える。
また、特定外来生物への指定が議論されているもので最も有名なのは、ミドリガメの通称でお馴染みのアカミミガメ。ペットとして人気だが、20年~30年生き、大きくなり続けるため持て余した飼い主が捨てた個体が全国で大繁殖。イシガメやクサガメといった在来種を脅かしており、国も要注意外来生物に指定。津城跡の堀にも多数が生息している。特定外来生物に指定されれば、飼っている人全員が申請を行う必要があるため、それを嫌がり捨てる人が増える可能性も高く、国も指定には慎重な姿勢を見せている。
名古屋城の外堀で大捕物を演じたアリゲーターガーを含むガー目の魚や、日本の在来種との交配や競合が危惧される海外産のクワガタムシなどペットとして人気のある生物が新たに特定外来生物に指定される予定で、飼い主には適切な行動が求められるようになる。
その一方で、食卓を彩る野菜など、我々の生活は外来生物に支えられている一面もあり、人間の身勝手な都合で連れてこられ、駆除される外来生物はある意味では犠牲者ともいえる。
外来生物が一度、自然環境に定着すれば、排除は容易ではない。そうならないために、最も有効な対策は自分が飼育・栽培している外来生物がどのような生態を持っているのかを的確に知った上で責任を持って最後まで面倒を見ること。市民一人ひとりが、この問題と向き合うべき時がきているといえる。

白塚海岸で咲く浜昼顔の美しい花

白塚海岸で咲く浜昼顔の美しい花

津市白塚町の白塚海岸で、ヒルガオ科の多年草「ハマヒルガオ(浜昼顔)」の薄いピンクの花が咲いている。見頃は今月上旬まで。
ハマヒルガオは、海岸の砂地などに生える。茎は地を這って長く伸び、初夏に直径約5㎝の花をつける。
白塚海岸のハマヒルガオは、報道などにより知名度が高まりつつあるためか、津市観光協会への見頃などに関する問い合わせがここ数年、増えているという。
また同海岸では他にも様々な海浜植物が生息しており、浜の清掃や外来植物の除草をボランティアで行っている「白塚の浜を愛する会」の代表・西口恵子さんは「伊勢湾の砂浜の中でも貴重な、海浜植物に恵まれた環境を大切にしたいと活動しています」と話した。

講演する大川吉祟さん

講演する大川吉祟さん

三重県内に伝わる食文化を調査・研究している「みえ食文化研究会」が主催する平成29年度総会と食文化講演会が3日、津駅西口前の学校法人大川学園5階ホールで開かれ、同学園理事長で、大正時代から昭和10年頃までの三重県の食生活の聞き書きを続けてきた大川吉祟さんが記念講演した。演題は「中世安濃津と都を結ぶ鰯街道」。
大川さんは、南北朝から江戸時代にかけて作られた「御伽(おとぎ)草子」の中の「猿源氏草紙」をあげて解説。
猿源氏草紙は、当時、阿漕が浦でたくさん採れた「鰯(いわし)」を都で売ることで豪商となった鰯売りの「猿源氏」が都の五条橋で高級遊女として名高い「蛍火」と出会うが、蛍火が大名・高家以外の席にはつかないため、猿源氏は東北地方の大名・宇都宮氏に化け、仲間の鰯売り達に頼んで俄か仕立ての大名行列を仕立て、遊女買いに乗り込んでいく。しかし、猿源氏は「伊勢の国阿漕が浦の猿源氏のイワシ買うえい」と振り売りを寝言で叫んだのために鰯売りだとバレてしまう。蛍火は、鰯売りと契ったことを嘆くが、猿源氏は故事来歴や和歌を引用してその寝言をどうにかこじつけて誤魔化す。蛍火はそれほど教養ある男ならと、猿源氏を許す…
という物語だが、当時の社会情勢とか庶民階級の力の有り様や、高級遊女の地位、また、商人であっても教養を身に付け、豪商にもなれば、偽物とはいえ、大名行列をも再現できるほどの力が鰯売りにあったことを指摘。当時の実力主義の時代背景を説明した。
さらに、三島由紀夫がこの話を元禄時代に置き換えて書いた戯曲(歌舞伎)「鰯売恋曳網」の解説や、安濃津の港と街が消えた明応7年(1498)の地震の話なども猿源氏と結びつけて話し、かつて安濃津(港)が伊勢商人たちの物流集積の拠点であったことを解説した。

[ 1 / 5 ページ ]12345