津市久居新町の近鉄久居駅東口前にある緑の風公園に設置されている上野英三郎博士像の帽子が心無い何者かに盗まれ、関係者からは怒りの声が上がっている。この像は久居出身で農学分野に大きな足跡を残した東京帝国大学(現東京大学)教授の博士と、その愛犬で有名な忠犬ハチ公を一対にした全国初の像で、東大にも同じく一対の像が建立されるきっかけにもなっており、一刻も早い解決が望まれる。

 

帽子が盗まれた後の銅像

帽子が盗まれた後の銅像

この像は、有志でつくる「上野英三郎博士とハチ公の銅像を建てる会」=多田滋郎会長=が、市民や団体から寄付を募って、平成24年10月に地元出身の上野博士の偉業を称えると共に、地域の観光振興となることを願い建立。銅像製作者は鈴鹿市在住の彫刻家・稲垣克次氏で、最大の特徴は博士とその愛犬である秋田犬・ハチが象られていること。このような形の銅像は全国初で、平成27年には東大の農学部正門近くに同じく博士とハチの一対の銅像が建てられるなど、今まで以上に博士とハチの心の繋がりに関心が集まっていることを象徴する銅像でもある。
詳細な時期は断定できないが恐らく先月中に盗難にあったとみられる博士像が被っていた帽子だが、実は建立当時にはついていなかった。一昨年頃に風雨にさらされている博士を思いやってか、頭に実物の帽子を被せる粋なイタズラが発生したことをきっかけに、稲垣氏に帽子の作成を追加依頼。稲垣氏がFRPで成型した帽子を被せ、接着剤等で固定していた。
帽子の盗難が発覚したのは先月30日。津南工事事務所の連絡を受けた多田さんが現地確認を行ったところ、博士像の帽子が無くなっていることを確認。しっかりと固定されていたので、強風などの自然現象で飛ばされる可能性は限りなく低く、盗難と断定。そこで、多田さんは同日中に津南警察署に行き、被害届を提出している。同署でも事件解決に向け、有力な情報を求めている。
犯人の目的は分かっていないが、もしイタズラだった場合、粋なイタズラをきっかけに被せられた帽子が心無いイタズラによって無くなるという、なんとも残念な話になってしまう。
この像が出来て以来、前述の東大に像が建立されたり、久居駅東口前の三重交通のバス停の名前が「ハチ公口」に変わるなど、少しずつ地域にも良い影響を与えていたこともあり、冷や水を浴びせるような今回の犯行に対し、多田さんは「素晴らしい銅像なので許せない」と憤る。
今後も地元の偉人とその愛犬の温かい絆を多くの人々に伝え、地域のシンボルの一つとして親しまれていくこととなる像だけに、一刻も早い解決が望まれている。
事件の情報は津南署☎津254・0110へ。(この稿7月3日現在)