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来年4月1日より現在の市町村単位から、都道府県単位の運営に移行する「国民健康保険(国保)」。国民皆保険制度を支える重要制度だが、加入者に低所得者や医療費支出が多い65歳~74歳の前期高齢者が占める割合が多いため、財政基盤強化が目的。移行に向けた準備が進められているが、三重県内では、市町間で保険料の一本化は先送りし、向こう6年の移行期間を設けるなどの方針が示されている。
全国の市町村が運営している国保は、どこも厳しい運営が続いている。サラリーマンが加入する協会けんぽや組合保険など、他の保険制度と比べると、加入者に所得の少ない非正規雇用者や定年退職後の65歳から74歳の前期高齢者が占める割合が多く、保険料収入が少ないだけでなく、医療費支出が多いのが特徴。そのような構造的な問題から、制度維持に不安があるため、財政基盤の強化を目的に、都道府県単位の運営に移行する制度改革が行われる。
三重県でも「三重県市町国保等広域化会議」を立ち上げ、県内29市町で議論を進めてきた。広域化といっても、運営主体が県に移行し、財政運営は行われるものの、市町はこれまで通り保険料の賦課や徴収などの業務は引き続き行う。その一方でまず大きな議論となるのが保険料の決定。広域化後は、安定運営を行うために必要な納付金を各市町がまかなえるよう県が算定した標準保険料を参考に保険料が決められることとなるが、現状市町間で、加入者の年齢層や所得状況、医療機関の数や医療費支出や算定方式そのものに違いがあり、保険料にも格差が生まれている。県としては広域化にあたり、同じ県内であれば一律の保険料が好ましいという考えを示しているが、これら状況を鑑みて、開始当初の一本化は見送り、向こう6年間の移行期間を設け、一本化をめざす。
前述の通り、窓口業務などは、各市町が引き続き行うため、加入者にとって大きな変化はないとみられる。一方、運営主体でなくなった市町はというと、広域化によって他の市町と、保険料の収納率や赤字状況などが一つの財政を支えることとなため、ある意味では、より緊張感のある取り組みが求められることとなる。国は、ジェネリック薬品の導入推進や、予防医療で成果を上げた自治体に公費を重点配分する仕組みをつくることも公表している。
津市では昨年度に保険料率の値上げを行ったこもあり、広域化後も現状の料率を維持できる見込みで、国や県の支援も増えることから、ある程度の安定運営が見込める。しかし、津市でも国保加入世帯所得が100万円以下の世帯が半数以上を占める中、高額の保険料を支払っている現実は依然として変わらない。将来にわたって持続可能な制度としていけるかも含め、更なる議論が求められているといえよう。
2017年7月27日 AM 5:00