4月に総務省より自治体間での返礼品合戦を是正する通知がなされ、ブームの過熱が一段落している「ふるさと納税制度」。津市では昨年度、返礼品の充実を図り、市外の寄附を増やしたが、それでも実質約1300万円の赤字となっているため、今月1日より返礼品の品目を更に増やし、更なる寄附の増加をめざす。一方、制度を利用する市民も本来の趣旨を再認識する節目にきているのかもしれない。

 

「ふるさと納税制度」は控除額の引き上げや、サラリーマンの確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が採用され、利用し易くなったことに加え、各自治体が豪華な返礼品を競い合うように用意したことで、利用者が急増。昨年中の税金控除の適用状況が反映する平成29年度のふるさと納税に係わる控除額は約1767億円(対前年度比約1・8倍)で、適用者は約225万人(同約1・7倍)となっている。
本来、ふるさと納税制度の返礼品は利用者の実質負担となる2000円を穴埋めするものだったが、地元特産品のアピールに留まらない豪華な返礼品で多額の寄附を集める自治体が出ており、総務省は自治体を応援する制度の趣旨に反するとして、今年4月、全国の自治体に対し、返礼割合を寄附額の3分の1以内に抑えること、金券や家電製品などの送付自粛、自治体内の在住者への返礼品の自粛などを求める通知を行っている。
その結果、過度な返礼品合戦にブレーキがかかると共に、制度の利用者が減っており、一部では〝バブル崩壊〟ともささやかれている。
津市はというと、ふるさと納税制の「津かがやき寄附」の使途項目に、市民からの要望を受け、「津城跡の整備」を加え、そこに集まった寄附を全額基金として積み立て、現在2000万円以上を保管するなど、集めた寄附をどう使うかという制度本来の趣旨に主眼を置いた運用を続けてきた。
その一方で、なんの手も打たなければ、市民が制度を利用することによる市税の流出は続くため、対抗手段として市外から寄附を募る必要がある。そこで市外在住者が3万円以上の寄附を行った場合の返礼品に、全国的にも知名度の高い精肉店・朝日屋=津市北丸之内=のすき焼き用特選松阪肉1㎏を用意したところ、寄附件数が増加。平成27年度の314件659万7000円に対し、583件1733万3000円で、寄附件数の内訳も市内133件、市外450件と市外からの寄附を大幅に増やすことに成功している。
しかし、津市内で昨年中にふるさと納税による市税の控除によって約1億2500万円が流出している。その内、約75%が地方交付税で補填され、ふるさと納税で集めた寄附額で補ってもなお、実質約1300万円の赤字が発生しているのが実情だ。
そこで、津市は今月1日より、津市の特産品や津市内の事業所が製造・取扱いをしている商品計21品目を返礼品に追加し市外から新たな寄附を募っている。従来の返礼品も総務省の通知に抵触する三重テラスの商品引換券2000円分や市内在住者への返礼品の取りやめを行った。また、市議会などからも移住促進やシティプロモーションにも繋がる体験型の返礼品を新設すべきという声も上がっているが、民間の宿泊施設などを活用すると、宿泊券に該当するものを発行する必要があるため、総務省から通知で避けるよう求められている品目「金銭類似性の高い物」に抵触する可能性が高く調整が難しいという。
国は一度ブレーキをかけたものの、制度利用の急激な落ち込みに対する反響も大きく、今後もどのような形で存続していくのかは未知数。そうである以上、寄附を増やすための取り組みは不可欠だ。
人口の少ない地方の自治体でも努力次第で、財源を増やしながら、地元の特産品のPRや地域振興などに繋げられる制度のメリットは大きいが、その部分だけがクローズアップされ、本来の趣旨を見失うのは本末転倒。過度な自治体間競争を防ぐ意味では今回の通知は、妥当といえる。
ブームの過熱が一段落した今だからこそ、返礼品の内容だけではなく、どのように寄附を、まちづくりへと生かしていくのかという制度の原点を大切にする姿勢に立ち返るべき時がきているのかもしれない。