津市では今年度中に「ため池ハザードマップ」の整備をすべく、開催中の津市議会に補正予算案を提出している。近年、全国各地で発生した地震、台風、集中豪雨でため池が決壊し、大きな被害が出ていることからも、防災上の課題となっている。津市には393カ所のため池があり、その多くが老朽化しているだけでなく、整備に時間もかかるため、ソフト面での対策として期待も集めている。

 

農業用のため池は全国に約20万カ所あるが江戸時代以前につくられたものが7割以上を占めており、耐久性に問題のあるものも少なくない。東日本大震災のような大地震や、先日の九州北部豪雨でも決壊し、大きな被害を出しており、近年では防災上の課題として認識されている。そこで全国の自治体が決壊した際の浸水想定区域や避難場所などを記した「ため池ハザードマップ」の整備を進めている。
津市には大小合わせて393カ所のため池があり、うち70個が下流に住宅や公共施設等があり、決壊した場合に影響を与える恐れがあるとされる「防災重点ため池」に認定されている。平成25年には、県内の自治体がため池の一斉点検を実施した際、クラックや漏水を目視で確認できた池は耐久性の問題から、整備が必要ということが判明しているが、思うような整備に至ってはいない。
ため池の整備には1カ所辺り7、8年かかるだけでなく、受益者である水利組合や農家にも相応の金銭的な負担があることが、その背景にある。また、その延長線上で今後、農家の減少に伴い、管理者が不在となる可能性があるため池もあるため、県や国では時間と多額の予算が必要なハード面での整備よりも、スピードに勝るソフト面による対応の必要性を訴えている。そこで最も手軽かつ有効な対策の一つとされているのがハザードマップの整備だ。県内では中山間地域で多くのため池がある伊賀市を始め、松阪市などで既に整備されている。
国は九州北部豪雨の発生を受け、全国の自治体に平成32年までにハザードマップを整備することを要請。その流れを受けて津市でも、急遽整備することとなり、9月議会に補正予算案を提出。予算額は約9973万円。
整備予定のマップには266カ所のため池について、浸水想定区域や避難場所、到達時間、歩行困難区域などを記載する予定。議会で予算案が可決されれば整備に向け、10月と11月に対象となるため池の周辺地域で、調査やワークショップで、地域住民からの聞き取りなども実施し、来年3月末の完成をめざす。
一昔前までは、ため池は、その周辺地域で暮らす人にとって非常に身近な存在であったが、新興住宅地などもでき、その存在を全く知らないまま暮らしているという人も少なくない。ハザードマップはそういった人たちにとっても〝見えないリスク〟を示す有意義なものになることは間違いない。津市では「マップはいたずらに不安を煽るものにするのではなく避難勧告発令時などに安心感を与えるために活用したい」としている。
前述の通りため池のハード面での整備問題は、農家の減少に歯止めが効かない現状で、今後も解決がままならない防災上の課題として、立ちはだかることは間違いない。そういった意味でも、ため池ハザードマップは、防災・減災を考える上で重要な指標となろう。