国指定名勝「三多気の桜」=津市美杉町三多気=は樹勢が衰退しており、市の委託で日常管理を担う地域住民の高齢化も深刻。市は平成23年にこの名勝の再生の指針を出し、保存管理計画策定を打ち出したが未だ手つかずの状態。そんな中、今年5月発足した「三多気の桜」景観保存会=田中稔会長(61)=は、地域内外から会員を募集。弾力的な活動で桜を将来に亘って守り、次世代への継承を目指していく。

 

県の事業で三多気の桜を訪れた学生達と話す田中さん(奥)

県の事業で三多気の桜を訪れた学生達と話す田中さん(奥)

国指定名勝「三多気の桜」

国指定名勝「三多気の桜」

幹が空洞化している桜

幹が空洞化している桜

国指定名勝「三多気の桜」は、伊勢本街道から真福院への参道沿いにある約400本の桜並木。伝承では、理源大師聖宝が899年頃に植樹したのが始まりとされる。周辺の集落や棚田、国登録有形文化財である茅葺きの家屋(田中さん所有)などと調和し見事な山里の風景を形成。市の「景観形成地区」でもある。
しかし古木が多く、シカの食害なども重なって樹勢の衰退が深刻化。そのため市は平成23年、「名勝『三多気の桜』再生のための指針」を策定したが保存管理計画は未だに立てられていない。
今年7月この桜を調査した日本樹木医会三重県支部長の奥田清貴さんは、保全管理について「(樹勢の低下が)気になってからでは遅い。剪定などを行うことで、ある程度の樹勢回復が見込める木もある。保全管理を行う場合、樹木医は予算に合わせて提言はできます」としている。
また桜の日常管理は長年、地元自治会による「伊勢地景勝・史跡保存開発事業委員会」が行っているが、高齢化で将来の担い手不足が危惧される。
そこで地元出身で市の嘱託職員の田中さんが、この名勝を守り次世代に継承するため同会を発足。会員は他地域からも広く募っており、桜愛好家など40名。今月2日には、県の事業で派遣された学生とともに桜マップづくりを行った。
田中さんは「会員から多種多様な意見を取り入れ、桜を積極的に守る仕組み作りに取り組んでいく。将来的には、(後継者がいない)茅葺きの家屋の利活用に繋げることや、桜の時季に地元の物産を販売するなど経済面での取り組みも検討しています」と抱負を話す。
津市の重要な観光資源であり、古来から地域住民の生活とともに在る三多気の桜。再生には地域内外の様々な立場の人・行政・専門家などの連携が必要であり、同保全会の活躍が期待される。
同保全会への問い合わせは田中さん☎090・7032・6487、またはメールmk43@ztv.ne.jpへ。