農地集約が進む中で全国で問題化しているのが相続時に名義変更されず、所有者が不明となっている相続未登記の農地。津市ではまだ大きな問題にはなっていないが、国も事態を深刻に見ており、そのような土地の利活用を促進する動きを見せているが、自治体としても農地の相続時の登記を促すといった地道な働きかけや集積に向かない中山間地域の農地をどう守るのかという施策を求められている。

 

国は全都道府県に管理できなくなった人から農地を借り上げて、新たな担い手に貸し付ける農地中間管理機構を配置している。そんな農地集約が進む中で、全国で問題が深刻化しているのが所有者の分からない相続未登記農地だ。
相続未登記農地はその名の通り、相続時に登記し直されないまま放置された農地。所有者が親から子へと代々農業を続けている間は、問題となり難いが相続人が農業をやめて農地を放置すると途端に問題の原因となる。農地の集積には当然、地権者の同意が必要だが、何代も相続が行われていると、相続人の数は膨大で実情を把握するのすら困難となる。特に資産価値の低い農地は相続時に、所有権がうやむやのまま放置されることもある。そういった相続未登記地が、大規模営農への集積に向いた優良農地の真ん中に存在し、虫食い状態となったケースは全国でも存在する。
こういった所有者不明の農地を利活用するために公示制度というものも存在はしているが、非常に使い勝手が悪い。対象農地の所有者の生存状況や相続している家族の所在などを確認した上で6ヵ月間の公示を行い、所有者が名乗り出なかった場合に、農地を中間管理機構が取得できるというものだが、作業が余りに煩雑で、わずか5年間しか効力を発揮していないため、全国でたった2例しか活用事例がない。
三重県農地中間管理機構によると、担い手のニーズが高い農地は圃場整備によって比較的新しい時期に登記し直されていることが多く、大きな問題にはなっていないが、相続未登記農地が農地集約の妨げとなったケースも実際にあったという。
津市でも同様で、大きな問題にはなっていないが、集積に向かない中山間地域の農地の状況については津市農業委員会でも実情を完全には把握できていない。そのような地域の耕作放棄地には所有者不明の農地が含まれている可能性は高い。
このような状況を危惧した政府は、所有者不明の土地を機構で借り上げる条件を大幅緩和する方針を示している。
ただこの問題の解決には、国だけではなく農地がある自治体の取り組みも重要となる。2015年の農林業センサスによると全国の耕作放棄地の半数近くを、農地を持っていても農業をしていない土地持ち非農家が占めているというデータが示されており、農業をやめた後に後継者がいない場合や、相続しても管理が難しい場合などは必ず地域の農業委員や農地利用最適化推進委員などへの相談や相続登記の必要性を周知すべきだ。対策の先進自治体では、利活用が出来そうな農地を抽出し、所有者の意向などをまとめるといった取り組みが行われている。
景観や防災など、多面的な役割を果たしている中山間地域の農地をどう管理していくのかという問題も、空き家問題と同時に各自治体が向き合わなければならない課題。空き家に付随する農地の取得面積の下限緩和等で移住者が取得しやすくなる取り組みなども非常に重要と言えるだろう。