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津市が開催中の市議会定例会に議案を提出している「津市公契約条例」は公共事業の発注の価格競争が激化する中で低価格入札のしわよせを、労働環境や賃金面で受けている建設系や施設管理系の労働者らの保護が目的。可決されれば来年、4月からの施行となるが、労働者たちの具体的な賃金を示す「労働報酬下限額」は施行後5年以内に定めるとするなど、適切な運用に向けた課題はまだ残された状態だ。
公共事業を受注した事業者が、一次、二次、三次と下請へ仕事を回す中で、労働者の労働環境や賃金の悪化が常態化し、公共工事や公共サービスの品質低下など、様々な問題を生み出す原因となる。それを解決すべく、千葉県野田市で平成21年に全国で初めて制定されたのが「公契約条例」。公共事業を受注した事業者やその下請け事業者で働く労働者の労働環境や賃金を保証する条項に誓約を求める内容。全国でそれに類する条例が生まれており、県内では四日市が施行済み。
津市が開催中の市議会定例会に提出した「津市公契約条例」の議案も、それらに準じた内容となっており、守られない場合は入札資格の停止といった罰則規定も設けている。全ての建設関係の労働者や清掃や警備、設備などのメンテナンスといった業務委託の労働者(下請けや孫請けなど含む)が対象。一方、事業主と労働者の側面を持つ一人親方や、裁量が認められている指定管理者の下の労働者は対象外。
そして、具体的な賃金指標を示す「労働報酬下限額」を定めていないため、市議会の一般質問でも複数の市議から早期に定めるべきという指摘が上がった。この点に関して市は議案の中で、来年4月の施行後に事業者団体、労働者団体、有識者などによる「公契約審議会」を設け、その中で議論を進め5年以内に具体的な金額を定めるとしている。条例によって、不適切な事業者が排除された結果、入札の相場が上がる可能性もあり、それに充てる予算が担保されるのかといった辺りも下限額を決める上で重要なポイントになりそうだ。他市の事例では、その自治体の職員の初任給を基準にしたり、最低賃金を上回る金額を職種別に定めるなど、自治体の状況を味加しながら下限額が定められている。
条例の実行力を担保するために欠かせないチェック体制にも万全を求める声がある。条例が施行されれば、事業者からの提出書類が増え、それに伴う事務量の増加は確実だが、担当の調達契約課では人員の増加などは考えられておらず、十分な力を発揮できるのか懸念もある。体制や条例が及ぶ範囲に関しても、下限額と共に施行後に然るべき形を探るとしている。
議会で可決という大前提はあるが、労働者やそれを適切に雇用する事業者を守ることは健全な地域社会を守るためには欠かせない施策といえる。それだけに実効力を持つ形での条例の運用が求められよう。
2017年12月14日 AM 5:00