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津市観音寺町の「偕楽霊苑」にある市有地の林や池などには、墓への納骨後に不要となった骨壺がいくつも捨てられている。自宅へ持ち帰るのを嫌がったり、処分の仕方が分からず、止む無く捨てた物がほとんどと思われるが、過去には付近で業者とみられる骨壺の不法投棄も発生。問題の根本には葬儀に対する考え方の変化も関わっている。
このような状況が常態化したのは10年以上前。この霊苑は戦後に、市内のいくつもの寺の墓地が集約される形でつくられた市内屈指の規模。その一角にある市有地の林や竹藪を中心に至るところに大小の骨壺が打ち捨てられている。それらは無造作に地面に転がっているものから、人目をはばかったせいか少し埋められているもの、池の中に投げ捨てられ、びっしりと藻類で覆われているものまで様々。墓地近くの道路脇で目を凝らすと、明らかに骨壺とみられる白い陶片を見つけることもできる。本紙では3年前にも、この状況を取り上げたが、一向に改善していない。津市内には多くの墓地はあるが、日常的に骨壺が転がっているのは極めて稀といえるだろう。
もちろん、墓地の各区画を管理している寺院では対応に多少の差はあれど墓に納骨後に不要となった骨壺を引き取ったり、墓地のゴミ捨て場に骨壺が置かれている場合も処理を行ったり、家庭での処分の方法を伝えるなど檀家に対しては然るべき対応を行っている。やはり、故人の遺骨が入れられていた骨壺を家への持ち帰ることは敬遠されがちで、どうすれば良いのか、菩提寺に相談する檀家も少なくない。
どのような人が骨壺を捨てているかはわからないが近年の葬儀の在り方の変化が関わっている可能性が高い。近年では菩提寺に声をかけず、家族のみでひっそりと葬儀を行い、墓に納骨する人もいる。そのため、骨壺をどう処分すれば良いかわからず、止む無く捨ててしまったというケースもあるとみられる。
しかし、実際は家庭で骨壺を処分するのはそう難しくない。ゴミ捨て場で無用の誤解を招かないように、細かく砕いて新聞紙などでくるんで出せば、市が燃やせないゴミとして処分してくれる。それ以外にも、有料で業者に処分してもらうといった方法もある。
また、この霊苑で市が管理しているのは墓地の周囲の道路や竹藪、池のみということもあり、公園などのように、普段の巡回や清掃などが行き届きづらいことも骨壺が捨てられる一因になっている。更に立地する地域の住民が管理と利用をしていることが多い小規模の墓地と違い、大規模で不特定多数の人間が出入りしやすい環境も拍車をかけているとみられる。
景観的な問題もあるが、最も恐れるべきなのは骨壺が骨壺を呼ぶという状況だ。実際に数年前、業者による大量の不法投棄とみられる事例も発生。このような状況が続けば、最悪の場合、遺骨が入ったままの骨壺が遺棄されてしまうというケースが発生してもおかしくない。
この霊苑は、津市を代表する桜の名所の一つである偕楽公園が近く、桜の時季には隣接する駐車場が開放される。市内外から多くの人たちが訪れることを考えれば、市にとっても放置すべき問題とはいえない。
ただ、この問題の根は深く、立て看板などの注意喚起だけで解決できるものではない。個人のモラルの問題と切り捨てるのは簡単だが、なぜこのような問題が起こっているのかを、冷静に分析することも必要だ。
家族や葬儀に対する考え方や価値観が多様化し、親から子へ墓を受け継ぎ次の世代へと渡すという不文律も崩れ始めている。そういった背景から生まれるこの問題は誰にとっても決して無縁ではない。多くの人々が真摯に向き合うべきといえるかもしれない。
2018年3月1日 AM 5:00
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