平成の時代はこの四月末に終り、五月からは新しい年号の幕が開かれます。今、テレビでは今上天皇の退位までの人生の旅として平成時代を彩る名場面が放送されています。その一場面を見ていると、3年程前に三重県皇居勤労奉仕団の一員として友人と参加した事を思い出しました。
天皇陛下が一般参賀などで私たち国民に手を振られる皇居宮殿の広場や赤坂御用地での園遊会の場所、お田植えの場所や皇居に飾られる盆栽の手入れの場所などを15人から60人程で手分けして落ち葉拾いや草むしりを行います。
大勢で行いますのでアッという間に綺麗になります。指示される嵐のリーダーの大野さん似の宮内庁の人とも親しくなり、和やかな日々を過ごしました。きれいになった御用地から空を見た時、ビルの谷間からスカイツリーが垣間見えました。
3日目には両陛下のご会釈がありました。奉仕団は四列になり(私は2列目)、両陛下は時間通りにゆっくりと入室されて団長の挨拶を受けられます。私から2メートル程の前に皇后さまが立たれた時、私は「あっ」と息を呑み、もう一度まばたきをしました。「菩薩様だ。生きた菩薩様だ。」と心の中で手を合せました。
拝むというのは美しいもの、光を見てありがたいと思う時の動作でしょう。あの慈愛に溢れたお姿、笑顔は私の心の中に深く映像として残っています。
後のお誕生日の記者会見で天皇陛下が皇后さまに感無量で震えたお声で感謝の意を述べられています。いかに心の糧にされていたかがよく解ります。笑顔はその人柄を表し、幸せ感を与えます。 常に平和を願い平成時代が戦いのない時代であったと心から安堵されたお言葉は皇后さまの大きな支え故と思います。次期皇后になられる雅子皇太子妃はこの美智子皇后の姿を学ばれてステキな皇后になられることでしょう。皇后さまはありとあらゆるものを含んだ菩薩さまに見えました。
菩薩とはすでに悟りを開いた如来(完成者)に近い存在の方です。悟りを得ながらも自分の事よりも他者の救済の為にこの世に留まっておられます。観音様、文殊さま、地蔵さまです。
また修業者としての弥勒菩薩、法蔵菩薩がおられ、利他の心を持って道を志した者は誰でも菩薩なのです。仏様には万物の源の大日如来がおられます。そして仏教開祖の釈迦如来の左右には知恵を現した文殊菩薩、慈悲の心を現した普賢菩薩がおられます。(人が死んだ時にお迎えに来て下さる)阿弥陀如来の左右には願いを叶えてくださる観音菩薩、煩悩を消してくださる勢至菩薩がおられます。
千手観音は多くの人を救おうと数え切れない程の手を持っておられます。薬師如来の左右は日光、月光菩薩が脇を守っておられます。菩薩はおしゃれな装飾品を身につけておられます。東大寺、飛鳥寺、興福寺等のお寺を訪れた時、有り難いなあ、嬉しいなあと幸せな気持になります。
皇后さまが天皇陛下の左腕をそっと持たれる姿は何ともほほえましく、そしてお二人は私達にはやさしいまなざしで語りかけられました。
作業終了後に私達は宮中三殿の囲いの横を通ったり、松の廊下跡地や百人番所、天守台を訪ねたりして楽しく貴重な時間を過ごすことができました。
竹馬の友と私は「うん、うん」とうなずき、満たされたほっこりした穏やかな気持で帰路に着いたのでした。
日本の宗教は神仏習合の国際性を持っており、すぐれた文化遺産であります。
私は日本に生まれ、生かされて良かったなあとつくづく思いました。
(全国歴史研究会、三重歴史研究会、ときめき高虎会及び久居城下案内人の会会員)