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65歳以上人口が総人口に占める割合を高齢化率と定義しています。高齢化率7%超14%以下を「高齢化社会」、14%超21%以下を「高齢社会」、21%以上を「超高齢社会」と区分すると、当然わが国は超高齢化社会に既に突入しています。
◆わが国の金融資産の現状
2018年末の金融資産は1830兆円で、内訳は現預金53・7%・有価証券14・5%・保険年金28・8%・その他3%となっており、相変わらず現預金が半分以上を占めています。
対照的に米国の金融資産は 81・7%兆ドル(1ドル約110円8987兆円)、現預金13・1%・有価証券53・9%(内訳は株式36・2%・債券5・9%・投信11・8%)・保険年金30・2%となり、現預金と有価証券の比率が日本とは逆転しています。
この背景には1995年から2018年までの日本株(TOPIX)128%と約3割の上昇に対し、米国(S&P500)514・5%・5倍増と、圧倒的に米国株の上昇が要因となっています。
他に税制や年金の仕組みなどで有価証券への優遇の違いがあります。根本的には、米国の直接金融シフト(企業の資金調達は有価証券市場から調達)とわが国の間接金融シフト(企業の調達は銀行借り入れが中心)が大きく関わっています。
家計の総資産では、1990年のバブル前とその後の資産内訳(総資産・土地・金融資産)の推移を調べますと、家計の合理的な行動が見えてきます。バブル前の1980年の家計の資産は、総資産1002兆円・土地476兆円・金融資産351兆円、バブル時の1990年の総資産2744兆円2・7倍・土地1485兆円3・1倍・金融資産1000兆円2・8倍とそれぞれ急増しています。
バブル後2000年の総資産2654兆円▲3
%・土地971兆円▲35%・金融資産1415兆円△41%、2010年の総資産は2647兆円で変わらず・土地715兆円▲26%・金融資産1567兆円△10%、2016年の総資産は2889兆円△9%・土地703兆円▲1・6%・金融資産1824兆円△16・4%となります。
1990年のバブル時は総資産も土地も金融資産も3倍前後拡大しましたが、その後の2016年比較では総資産は5%の微増、地価下落で土地は▲52%と大幅減に対し、金融資産はその後も△82%の大幅増となっています。
バブル期の定期金利は6%もありましたが、90年代に低下を続け、2000年代に入るとほぼ消滅しています。株式もバブル時の日経平均3万9000円から、その後7000円まで下落し、他に有力な資産の振り向け先はなく運用難の時代が続きます。
この様に物価が下落し続けると、保有する現金の価値は相対的に高まる為、現預金を増やす家計の選択はデフレ下では合理的な行動だった訳です。
◆高齢者の金融資産状況
全体の金融資産が大幅に増加している割にリスク商品の多い高齢世帯が保有する金融資産は過去20年間横ばいとなっています。ただし日本の人口の約3分の1が65歳以上となっている状況で、1830兆円の家計金融資産の過半がこの層に集中し、さらにその半分は75歳以上が保有しています。資産の高齢化も進んでいます。しかも高齢世帯は株式や投資信託などのリスク資産も多く持っています。約270兆円規模の家計のリスク資産の4割にあたる110兆円前後を70歳以上が保有しているのが現状であります。
今後わが国で高齢化が更に進み、資産も同様高齢者の保有が進むと、高齢者特有の資産の停滞が懸念されてきます。特に金融資産の中でリスク資産といわれる有価証券の停滞が問題となってきます。高齢者にとって体力や身体的機能の衰えは致し方ない状況ですが、その中に認知症の割合も当然上昇してきます。
65歳以上の認知症の推定者は2015年約7人に1人(有病率15%)、2915年には約5人に1人(20%)になると予測されています。
日本の家計金融資産は2030年度時点で2070兆円と推計され、認知症高齢者の保有割合は2017年度の7・8%から2030年には10・4%に高まり、2035年に全体の15%に達すると推計されています。
みずほ総研の試算では、70歳以上の人が持つ有価証券は2035年に468兆円に増え、認知症患者が持つ可能性は150兆円と推計されるデータも出ています。
この巨額資産の何割かが塩漬けになるだけでも、日本の経済や社会にとって大きな問題となります。
◆高齢者の認知症等に伴うリスク資産の死蔵化への対応
高齢化の進展とともに高齢者の保有する個人金融資産の割合は一層上昇していきます。
高齢者の判断力の特徴として、これまでの経験に依存した判断をする、多くの選択肢への対応が難しくなり、解かりやすい情報とシンプルな選択肢を好むようになる。意思決定を延期する傾向が強く、いったん保有したものを手放したくない思いが強くなる。
この他に肯定的な感情的出来事や情報を記憶し、ネガティブな情報を忘れるあるいは注目しない傾向が出てくる。将来を展望する視点ではなく、過去を振り返るという視点に立つなどがあります。このように加齢に伴う金融商品のリスク判断など認知機能の低下は進んでいきます。その為にも金融業界は解かりやすい説明、大きな文字、親切丁寧な対応 高齢者の心身を理解した対応や商品設計の工夫に心がけることが重要になります。
また長寿社会における、高齢者の消費、資産管理、運用などの経済活動を支援するためのサービスや制度が求められます。
金融マンは、金融商品の運用の他、保険・土地家屋・事業承継・税金など高度で複合的な資格と能力、親切丁寧な性格が求められます。
2019年5月23日 AM 4:55
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