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(前回からの続き)
アメリカ軍の空海救助作戦について述べる。
第20陸軍航空隊は1945年4月、4ERS、第4緊急救助隊を設置する。空からと海上での救助態勢を整え、マリアナの基地から日本本土各地の空爆に向かうB29の飛行コースに沿って次の艦艇及び航空機が配備された。
潜水艦。海上艦艇。海軍飛行艇、海上ダンボ〔救難用のPBY「カタリナ」双発水陸両用飛行艇〕。スーパー・ダンボ。
陸軍航空隊飛行機〔スーパーダンボ〕、捜索救助を専門とするB29。その長大な航続力を生かして遠方へ進出、不時着水搭乗員上空を長時間飛び続け、救命ボート、食料品や「ギブソン・ガール」のような無線機器の投下や、潜水艦、艦艇や飛行艇を無線誘導で海上の搭乗員の救助を求めることができた。
潜水艦と水上艦艇はその日の作戦が終わるまで、指定位置に留まり、海軍の飛行艇と救難専用のB29は位置ごとに指定された時刻から、最後の攻撃機が通過し終わるまで、滞空哨戒することになっていた。
シャーマン機内には緊急に機外脱出を塔乗員に告げるベルがけたたましく鳴り響いていた。シャーマン機は野洲市から一直線に伊勢湾方向へと飛行し、津市上空にさしかかった。津市民が見上げる中、シャーマン機の尾部から一名の搭乗員が機外脱出をした。白いパラシュートが開いた。
非常時に際し、B29の搭乗員はどのようにして、機外脱出するのであろうか。次にその手順を記す。
「B29機外脱出手順…機長が機外脱出の必要性について決断する。警報ベルの短く切れる音を連続して鳴らし、出来る限り素早く機から脱出の準備をするよう命令を出す。そうすることで、搭乗員は脱出準備の時間が得られる。緊急事態が最初に発生した時点で搭乗員に警告すること。
機外脱出しなくても安全に緊急事態に対処できることが判れば、脱出準備の命令は取り消してもよい。できるなら、機の高度を上げること。機長はインターホンか、警報ベルの連続音により、機外脱出の本命令を出す。 脱出命令が出るまで脱出してはいけない。全搭乗員は、いつ、どこで、どのようにして機外脱出をするのか知っておくこと。脱出が安全かつ適切に行われることを確実にするための唯一の方法は地上で、よく繰り返して行われる脱出訓練である。実際、脱出の手順を予行演習で、できるだけ何回も訓練しておかなくてはいけない。特定の搭乗員の手で明示された計器類の破壊の模擬訓練も含まれていることを忘れないようにすること。〔著者注。ここでいう「計器類とは当時世界最高水準にあった『ノルデン爆撃照準器』類を指すものと思われる。破壊用の斧も装備されていた〕
下記の図〔著者注。「下の図」は紙幅の都合により本稿には掲載しない〕は各搭乗員に使用される出口経路及び脱出用ハッチを表している。全搭乗員と一緒にあなたの部署を学び、統制のとれた手順を練習しておくこと。この図はそれぞれの搭乗員によって使用されるように勧められている出口である。各搭乗員が脱出する順序を指示する番号が明示してある。前部の爆弾格納庫は前部の搭乗員室の搭乗員の代わりの出口である。機中央の機関銃手達は後部出口を代わりの出口として使用する。レーダー士の代わりの出口は後部の爆弾格納庫である。尾部機関銃手は自分の機銃室のハッチを代わりの出口として使用する。海上では、尾部機関銃手は非予圧部から自分一人用の「救命ボート キット」を取り、尾部出口より機外脱出する。海上で機外脱出警報が出た時は、自分の部署近くに設置されている一人用「救命ボート キット」を取り外し、パラシュート〔タイプQAC・AN6513─1A型〕の縛帯の止め金具に取り付ける。「救命ボートキット」の角を開け、ひもの端を引っ張り出し、パラシュートを縛帯の下へ通す。それから、救命胴衣のひもの輪に金具で留める。搭乗員はお互いに全てのひもや「救命ボート キット」がきちんとしているか、また適切に調整されているのか、点検しておくこと。
機長と副操縦士用の「救命ボートキット」は、各々の座席の丁度後ろ側の防弾装甲板の後に備えてある。
航空機関士用の「救命ボートキット」は前上部のハッチと通路ドームライトの間の室内の天井にひもで縛り付けてある。
航法士、無線士、爆撃手用の「救命ボートキット」は下部前方銃座と車輪格納昇降段の間の床にしまい込まれている。レーダー士〔随意の機関銃手〕用の「救命ボートキット」は、丁度尾部かつ後方の不時着水用のハッチの高さのところの左側の壁にひもで縛り付けてある。
尾部機関銃手用の「救命ボート キット」は下部銃座近くの丁度後の右の壁にひもでくくりつけてある。〔注。以上述べた手順のいずれかが、個々の飛行機に装備されている。積み込みの違いや装弾又はその他の理由により適用されない時は、訓練を変えること。個人装備官の助けを借りて、自分の飛行機で安全に活用できると判っている脱出訓練を考えておくこと。実行できる脱出手順を確立し、それからそれを繰り返し訓練して、習得することが重要である〕。 (次回に続く)
2019年9月26日 AM 4:55