津市の雲出本郷町に終点がある『国道165号』、津市で暮らす人々の生活に欠かせない重要な幹線道路。津市から奈良県桜井市までの区間は、長谷寺をめざす初瀬街道がルーツ。関西から伊勢参りで訪れる人々に古くから利用されてきた道で、国道となった現在の始点は大阪市北区の梅田新道交差点。以前に全区間を踏破した国道163号に続き、国道165号の踏破を試みる。    (本紙報道部長・麻生純矢)

 

国道165号終点のある国道23号雲出本郷町交差点付近

国道165号終点のある国道23号雲出本郷町交差点付近

国道165号は、国道1号や国道163号を始めとする7つの国道の終点と起点が集まる梅田新道交差点から国道23号と交差する津市の雲出本郷町交差点を結ぶ総延長130㎞超の国道で三重県、奈良県、大阪府を結んでいる。

三重県から奈良県にかけての区間は、旧伊勢国と旧大和国を結ぶ初瀬街道がルーツ。関西から伊勢参りに向かう人が利用したり、逆に伊勢国から関西に向かう人々も然りで、国学者・本居宣長の菅笠日記にも、街道を歩く旅の様子が描かれている。街道の終着点である初瀬(現在の桜井市初瀬)にある長谷寺は全国にも、その名を知られる名刹である。
本紙では20周年企画として一昨年夏より今年の初頭まで、国道163号線の全区間を踏破する連載を行ない、多くの反響を得た。そこで平成から令和へと大きく時代が変化していく中、この街の記憶を残すと共に、普段何気なく通っている国道の未知なる姿をお伝えすべく国道165号の全区間の踏破を試みる。
京都府の南端及び奈良県北部を通り、大阪府へと入る国道163号をめぐる旅と終着点自体は同じ場所だが、当然ながらそこに至る道程は全く異なっている。
この地域で暮らす人々にとって、名張市より西に位置する奈良県内から大阪府にかけての様子は特に新鮮なものとして映るかもしれない。
国道163号を巡る旅(約120㎞の行程を6分割した上で踏破)で確信したのは、20世紀後半から現在までモータリゼーションが台頭し続ける中、すっかり姿を消してしまった徒歩の旅の味わい深さ。移動に多くの時間を費やした昔の人々と同じ時間感覚を共有することで、様々な事象が浮かび上がることもある。そして、多くの人々がそれぞれの思いを抱えながら、踏み固めてきた結果できあがった道が今ここに存在している理由や、そこで繰り広げられた歴史やドラマを掘り下げることもできる。
また、ゆっくりと流れる景色、温度、湿度、におい、肌触りなど、五感を通じた体験も徒歩の醍醐味。そういった一本の道を通じた体験を、前回の旅と同じく連載を通じて綴っていく。
2県1府にまたがる100㎞を越える徒歩の旅は〝既知〟から〝未知〟を探しに行く道程でもある。起点の津市から梅田新道交差点を遡るもう一つの物語が始まる。
(連載は次号の新年号よりスタート)