2021年5月

境内の木を丹精を込めて剪定する村田住職

境内の木を丹精を込めて剪定する村田住職

美里町家所の光照山・明顕寺の村田智教住職(68)は、「日本庭園」と「書」をこよなく愛する表現者として、また趣味人として地域の人々に知られている。
村田住職は22歳から25年間、高田本山に勤務、その後に同寺を継いだ。念仏を唱える中で「書」の魅力に魅せられ、漢字を四日市の加藤子華氏に、また、かなを村田阿邨氏と、大阪の宮本竹徑氏に師事した。
楷書、行書、草書、かな等、あらゆる書体を、きびしい線や、やさしい線、墨の濃淡を自在に操り、デフォルメしながら感性のおもむくまま墨を置いていく独自のスタイルが特徴。平面作品ながら絶妙な余白のとり方などで奥行きのある世界を描き出す。
「書は絵画のように色彩や遠近法はないが、その分、〝文房四宝(硯・墨・紙・筆)〟を駆使して表現する醍醐味がある」と、立体や色彩を超えた書の魅力を語る。
また、その世界観は日本庭園にも通じるという。同寺の広大な境内には様々な花木が植えられているが、基本的に住職自身で手入れする。
書に様々な線質や〝かすり〟があるように、庭にも大きな石、小さな石、若い木や年老いた木など、いくつかの要素がある。石の大きさ、配置、枝ぶりを左右する剪定、また、借景をどう取り込むか…これらを勘案しながら四季に応じて丹念に手を入れていく。
心掛けていることは、「書も日本庭園も遊びごころは必要だが、遊び過ぎないこと」。若い人へは「表現の幅を広げるためには、色んな事に興味を持つこと」とアドバイスする。
住職の傍ら秋田犬の繁殖や鯉や金魚など観賞魚の飼育、盆栽・盆石など、多趣味だからこその言葉と言えようか。

オーダースーツを手にする小林さん

オーダースーツを手にする小林さん

創業慶応3年(1867)、以来154年間、オーダースーツやオーダーシャツなどを手がける仕立屋の中で全国で最も古い歴史を持つ津市万町津の「丁子屋」の店主、小林一仁さん(55)は、生地選び、採寸、型紙製作、裁断、縫製、仕上げまで手がける数少ない職人の一人だ。
現在は、これらの工程は、ほぼ分業化されており、それぞれが専門職として成り立っている。
一方で、オーダースーツは、お客さんの好みや体形、生地選びなど全体のバランスが重要で非常に繊細な作業と感性が求められる。そのため、「一人の職人が一貫して携わるのが本来の姿」と話す。
小林さんは東京のファッションの学院で型紙(パタンナー)を学んだ後、卒業後は企業に裁断・縫製技術者として勤務。昭和63年に「㈱ニコル」に入社、パタンナーとして腕を振るってきた。その後、9年間にわたり身につけた各技術と洋服学の知識をもって平成4年に帰津。父親の営む丁子屋に専務として入り、同10年には同店の3代目(今は無き本家の丁子屋から数えて6代目)として跡を継いだ。
生来の「ものづくり好き」で、「もし、店を継がなかったら宮大工になりたかった」と笑うが、「お客さんに満足して頂けるスーツに仕上げて着てもらえるのが仕立屋の醍醐味」と現在の仕事に誇りを感じている一方で「一生修練するのがこの仕事」と、感性の磨きを怠らない姿勢はまさに職人の鑑と言える。
そんな小林さんの趣味はクレー射撃。父方の家系は松阪市宇気郷村の豪族。祖父、父親も猟犬(ポインター・セッター)を伴い猟師としてキジを獲っていた影響で、自身も銃砲所持許可を取得。本業の傍ら散弾銃で鴨を獲っていたが、子供が生まれたのを機に狩猟は休止した。
以降は気が向いた時に上野市にある射撃場で的(クレー)を射止めに行くのが一番の気晴らしとか。とはいえ、年々必要性が強くなるシカなどの害獣駆除を担う猟師の高齢化などで、いづれは小林さんが地域の山や農業資源を守る役を担う時代も来そうだ。

森林の荒廃が問題化する中、森林所有者による適切な森林管理とそれを促す森林所在地の市町村の森林管理の責務がより明確化された『森林経営管理制度』は開始から3年目を迎えた。市域の58%が森林を占める津市でも同制度に基づく事業を実施しており、現在は森林所有者に対して、森林を自己管理するのか、市への管理委託を希望するのかを確認する意向調査などを実施。所有者更なるの協力も不可欠だ。

 

森林経営管理法に基づく同制度の目的は大きく2つ。1つ目は林業の成長産業化。戦後や高度経済成長期に植栽された人工林のスギやヒノキが木材として利用可能な時期を迎えようとしており、「伐って、使って、植える」という森林の適切な経営管理をめざす。
もう一つは、森林資源の適正管理。森林は経済的な価値だけではなく、防災機能、水源涵養、景観形成、地球温暖化防止など、いわゆる多面的な機能で大きな役割を果たしている。しかし、林業の低迷によって資産価値を失った森林の多くが管理されないまま荒廃。相続登記も行われず、境界線が不明になっているケースも多い。
津市は市域の面積7万1119haの内、森林面積はその58%に当たる4万1533haを占めている。このうち3万3551haの民有の人工林中で、適切な整備が行われていない約2万5000haが制度の主な対象となる。津市は森林所有者を対象に、制度に基づく森林の適切な経営管理に取り組む前段階として、自己管理を行うのか、市への管理委託を希望するのかを確認する「経営意向調査」を実施。令和元年度は芸濃地域(3793ha)の2431名、令和2年度は美杉地域(1万6460ha)の4884名の計7315名に調査票を郵送している。うち回答があったのが、全体の52%に当たる3780名。そのうち委託希望は2641名と多数を占めていた。委託希望者の中には、そもそも相続で受け継いだ森林に入ったことがない人も多く、調査票を受け取って初めて自分が森林を所有していることを知ったというケースもあった。
一方、未回答は31%で市は回答を促す通知を行う予定。また、17%は宛先不明で返却されているため、固定資産税情報や登記簿で調査を行い、判明した所有者に再発送を行う。ただ登記が書き換えられないまま、何代にもわたって相続された結果、相続人が多数になっていたり、全国に散っているなど、調査は非常に手間と時間がかかる。
市への委託希望をした場合は、木の生育状況や密度など森林現況調査を行った上で、隣接地の所有者立ち合いのもと、境界の明確化を行う。これまでに芸濃町河内地内182・34 haで完了。
森林現況調査と境界明確が行われた後、委託の条件が整った森林に対して所有者の同意を得た上で、経営管理権集積計画を作成し、74・50 ha分を完了。ここで林業経営に適さないと判断された森林に関しては、市と15年の管理契約を結び、その間に市が1回の間伐を行う。現在林業経営に適する森林と判断された場合は「経営管理実施権配分計画」を作成し、県の認定を受けた林業再委託が行われる。現状津市ではまだここに至った森林は無い。これまでに市有林と芸濃地域の委託を結んだ森林では間伐も行われるなど、整備も進められている。
今年度は一志地域と白山地域の一部(計6681ha)で意向調査を実施し、7月頃に所有者の下へ調査票が送られる予定。令和5年度までに市内全域の森林で意向調査を実施する予定。
津市では対象となる森林が広いため、森林所有者の協力が不可欠。市への森林の管理委託を所有者が希望しても、隣地の所有者が調査に未回答だったり、所有者が不明の場合は境界の確定が難しくなるからだ。特に森林の多い中山間地域では少子高齢化が顕著で、境界などの事情に詳しい人が健在なうちに調査を完了させることも肝要。森林所有者が相続に向け、市に管理委託をするのか、自分たちで管理していくのかを家庭で話し合うといった小さな積み重ねが地域の財産である森林を守ることにもつながる。
制度の担当部署である林業振興室では意向調査の対象地域で相談会を開いているほか、随時森林所有者からの相談も受け付けている。過去に調査票が届いて、いままで未回答の人の回答も可能なだけでなく、まだ調査の始まっていない地域の森林所有者からの相談も受け付けている。
問い合わせ津市林業振興室☎059・262・7025。

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