「歳時記」を手に写真家・北出正之さん

「歳時記」を手に写真家・北出正之さん

桂畑地蔵踊り(美里)

桂畑地蔵踊り(美里)

南長野かんこ踊り(美里)

南長野かんこ踊り(美里)

写真家・北出正之さん=66・津市白山町=が6月1日、三重の祭りと民俗行事をまとめた写真集「祭時記」を月兎舎から発刊した。
北出さんの写真歴は50年。学生時代に生態写真など科学写真の分野に興味を持ったのがきっかけ。百五銀行に勤務する傍らも余暇を利用してネイチャー写真や心象風景をモチーフとする創作活動を続け、公募展での入選・入賞や写真展の開催を重ねる。
広報課に在任中に三重をテーマとする広報・広告業務に携わったことで郷土に対する想いを一層深くし、地域に根ざした被写体を主眼に、特に近年は祭りや民俗行事の撮影に傾注。その取材活動は計700回以上、写真に収めた祭事の総数も500件を超える。
コロナ禍の影響で生活様式の急激な変化が求めらる中、「本来、人が生きてゆくための心の拠り所である《祈り》を具現化した祭りや民俗行事が置き去りにされるような風潮が強くなりつつある」と懸念を抱くようになった。
また、規模の縮小や簡略化に追い込まれるばかりか、存続が困難になった祭礼行事の幾つかも目の当たりにする中で、「民俗学の造詣がある研究者でもない、郷土を愛するばかりの一人の写真家の使命感から、21世紀初頭に於ける三重の祭りと民俗行事のアーカイブスとして次の世代に伝えるべく出版を発意しました」と動機を話す。
祭事を季節の順に「獅子舞」「迎春行事」「盆行事」といった章で分け、特徴的な祭りである「浅間祭」と、伊勢志摩・東紀州の漁村部の祭りを「海民の四季」として特立させた。また、収録した写真の多くは、訪れたその日、その時の祭りの印象を主観的な表現も交えて記憶し、伝えることを試みて撮影している。
巻末には撮影リストを掲載し、収録できなかった祭礼行事を含めて取材した510件全ての名称と撮影地、関連する社寺名とともに、延べ712回に及ぶ撮影年月日を収録。その時点で祭事が行なわれたことを記録に残すなど、資料としての充実も図っている。
「コロナ禍の今、感染症を克服する術は科学的な論拠に基づくことは当然ですが、祇園祭や天王祭に象徴されるように《祈る》ことで生きる力を得てきた長い歴史に思いを致す中で、《祈り》を本質とする祭りや伝統行事の役割が忘れ去られることなく、将来に向けて承継されることを願っています」と語っている。
B5横長判160頁(カラー144頁、モノクロ16頁)。税込2750円で県内の主要書店、アマゾン、月兎舎HPなどで購入できる。