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消費税の周知活動など税務行政に協力する団体「津間税会」=森昌哉会長=の通常総会が5月27日、プラザ洞津で開かれた。総会閉会後は、津税務署長の小倉康彦氏が「これからの税務調査」と題して記念講演した。
小倉氏は、先ずこれまでの税務調査の経験として「かつて個人課税部門に配属された頃、先輩に同行して土木建設業者へ調査に行った際、先輩が工事現場をぱっと見ただけで売上のごまかしを指摘した事に驚いた。これはコンクリートの量、従業員の数など現場の雰囲気で売上を計算する事ができたから」とし、「それからは、自分も毎日、図書館に通い、本棚に並んだ本の数を当てる練習をした。もちろん、本の大きさや厚さはバラバラだが、経験を積めば分かるようになった。これは飲食店への調査にも使えた」と話した。
これからの時代の税務調査については「課題の一つが富裕層への調査。個人であっても対象個人の関係法人や家族もあり、あらゆる税法を駆使しなくてはならない。例えばスイスの銀行や、パナマなどの租税回避地に資金を移す事案が問題になったが、今ではCRS(共通報告基準)に基づき、各国の税務当局は自国で非居住者が保有する金融口座情報を交換することが可能になり、調査がやりやすくなっている。しかし、海外とのやり取りだけに時間がかかる」と話した。
また、「国によっては、世界中から資金を集めるため、そもそも運用利息に対する課税が無い国や、税率を低く設定している国もある。富裕層は会計法人に対し、自分に有利な租税回避スキームを構築させている場合も多く、また、税法もかなりの頻度で改定されるので、我々税務職員は、常に問題意識を持ち、最新の税務調査能力を維持しなくてはならない」と力強く語った。
さらに無申告の把握と調査については、「ビットコインなど仮想通貨による電子取引は、携帯電話ひとつで個人対個人で行われるため個人の特定が困難。マネーロンダリングに利用される場合もある。
現在、国税局は専門の担当者を配置し、あらゆる租税回避に対応するべく万全の体制を整えている」と述べ、公正性を保つべく、脱税は絶対にさせない、逃さない姿勢を明らかにした。
2021年6月10日 AM 4:55