2021年6月

江戸時代には津藩の特産品として将軍家にも献上されていた高級織物「津綟子」は現存数が非常に少なく幻と言われているが、津市在住の郷土史研究家・浅生悦生さんが、芸濃町の旧家より明治後半に作られた男性用の襦袢地(肌着用生地)を発見。これまでの発見例では、最後期の品にあたり、その実態や歴史を明らかにするのに貴重な資料となる。また、同時に明治期の貴重な古写真も大量に発見されている。

 

 

大量の古写真、津綟子を手に…浅生さん

大量の古写真、津綟子を手に…浅生さん

津綟子と古写真が発見されたのは、芸濃町椋本の旧家の駒田家。明治期に4代目・駒田作五郎(1849~1895)が茶栽培を始め、明治14年(1881)に、製茶輸出会社を設立。明治41年に大日本製茶株式会社を設立するなど、紅茶輸出で財を成しただけでなく、紅茶をパリ万博にも出品している。近年まで医業を営んでいたが廃業している。家の取り壊しに当たり、現在の所有者より浅生さんに依頼があり、調査したところ、津綟子の襦袢地と、明治期の古写真を大量に発見。
津綟子は江戸時代から大正時代にかけて、現在の津市の美濃屋川流域沿いの主に現安濃町で生産されていた苧麻(からむし)などを材料にした綟り織。高い技術力と独自の製法によってきめ細かい隙間が生まれるため、通気性に優れ夏物衣料(肩衣、袴など)や蚊帳などの素材に重宝された。江戸時代には津藩が誇る特産品であり、将軍家への献上品や他大名家への進物にもされ、製法は門外不出で厳しく品質が管理されていた。木綿織物と比べると生産には多大な労力と卓越した技術が必要なため、武士の公服が必要なくなった明治期に衰退し、昭和初頭に完全に姿を消した。資料には存在が記されているものの、長きに亘って、実物が見つからず、幻の織物といわれてきたが、近年では県指定文化財の肩衣など数点が発見され、調査研究が少しずつ進んでいる。
今回発見された明治後半につくられた襦袢地は幅33㎝、長さ553㎝で男物の肌着一着分に相当する。津の町で最後まで残っていた津綟子を扱う商人の河邊清右衛門が販売したことを示す商標がついている。商標がついている物の発見は初めてで、現存する津綟子の中では最後期に生産されたものに当たる。当時の資料に記載されていた内容を裏付ける発見で、幻と呼ばれる津綟子の歴史や製法をより深く知るためにも貴重な資料となる。
そして、津綟子と同時に、明治初期の古写真計201点も発見された。当時の写真は、卵白を媒体とした印画紙をガラスのネガと密着させて焼き付ける手法で現像。いわゆる鶏卵紙写真は、相当な貴重品だった。発見された写真の多くが名刺大で、政治家、軍人、経済人を中心とした人物写真と風景写真が占める。裏書に、作五郎への宛て名書きがあるものも混じっていたので、浅生さんは事業や県会議員として、多くの人と交流したり、全国各地の旅先で手に入れたものと推測した。しかし、人物写真の顔ぶれの中には、放送中の大河ドラマの主人公を務めている渋沢栄一や、五稜郭で散った新撰組副長・土方歳三など幕末から明治にかけて活躍した有名人の写真も多数含まれているため、作五郎と実際に交流があった人物だけでなく、当時販売されていたブロマイドも含まれているとも推測している。中には明治に現在の津市大門にあった写真館・塩見舘で撮影された写真もあった。県内で、これだけ多数の鶏卵紙写真が発見されたのは初。今後の研究が期待される。
浅生さんは「まだまだ旧家などには、貴重な資料が眠っている可能性があるので、今回の発見が更なる新資料の発見のきっかけにもなれば嬉しい」と期待する。

安濃津ばきを手に…大谷さん

安濃津ばきを手に…大谷さん

6月20日㈰の父の日には、日頃の感謝を込めて、心のこもったプレゼントを…。
今年は津市丸之内の「大谷はきもの店」の看板商品『足やすめ安濃津ばき』を贈ってみては。
同店は創業120年を超える老舗。安濃津ばきは、店主・大谷明さんが「日本伝統の履物文化を伝えたい」という思いで開発したオリジナルの履物。表台には肌ざわりが心地良い本畳やめせき織(琉球畳表)を使い、鼻緒には地元の特産品である伊勢木綿と松阪木綿を使用している。
昔ながらの雪駄は靴底が革で滑りやすいため、現代の道路事情に合わせて合成ゴムを使うなど、一度履いたら止められない優しい履き心地と使い勝手の良さを実現している。
これまで全国各地の百貨店の物産展に出品し、人気を博してきたが、今年は新商品「婦人カリプソめせき織り」が、全国推奨観光土産品審査会(日本商工会議所など主催)のグローバル部門で入賞。同部門は海外観光客へのインバウンド需要を評価している。
安濃津ばきは、紳士用は2500円~5200円と多彩な商品を用意。子供や女性用もあるため、素足で過ごす時間が増えるこれからの季節には幅広い層にお勧め。
大谷さんは「父の日には、伝統と日本の心で男性の足元を彩る安濃津ばきを」と呼びかる。
問い合わせは同店☎津228・2398。

講演する小倉津税務署長

講演する小倉津税務署長

消費税の周知活動など税務行政に協力する団体「津間税会」=森昌哉会長=の通常総会が5月27日、プラザ洞津で開かれた。総会閉会後は、津税務署長の小倉康彦氏が「これからの税務調査」と題して記念講演した。
小倉氏は、先ずこれまでの税務調査の経験として「かつて個人課税部門に配属された頃、先輩に同行して土木建設業者へ調査に行った際、先輩が工事現場をぱっと見ただけで売上のごまかしを指摘した事に驚いた。これはコンクリートの量、従業員の数など現場の雰囲気で売上を計算する事ができたから」とし、「それからは、自分も毎日、図書館に通い、本棚に並んだ本の数を当てる練習をした。もちろん、本の大きさや厚さはバラバラだが、経験を積めば分かるようになった。これは飲食店への調査にも使えた」と話した。
これからの時代の税務調査については「課題の一つが富裕層への調査。個人であっても対象個人の関係法人や家族もあり、あらゆる税法を駆使しなくてはならない。例えばスイスの銀行や、パナマなどの租税回避地に資金を移す事案が問題になったが、今ではCRS(共通報告基準)に基づき、各国の税務当局は自国で非居住者が保有する金融口座情報を交換することが可能になり、調査がやりやすくなっている。しかし、海外とのやり取りだけに時間がかかる」と話した。
また、「国によっては、世界中から資金を集めるため、そもそも運用利息に対する課税が無い国や、税率を低く設定している国もある。富裕層は会計法人に対し、自分に有利な租税回避スキームを構築させている場合も多く、また、税法もかなりの頻度で改定されるので、我々税務職員は、常に問題意識を持ち、最新の税務調査能力を維持しなくてはならない」と力強く語った。
さらに無申告の把握と調査については、「ビットコインなど仮想通貨による電子取引は、携帯電話ひとつで個人対個人で行われるため個人の特定が困難。マネーロンダリングに利用される場合もある。
現在、国税局は専門の担当者を配置し、あらゆる租税回避に対応するべく万全の体制を整えている」と述べ、公正性を保つべく、脱税は絶対にさせない、逃さない姿勢を明らかにした。

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