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2022年2月
ようやく大和高田市から香芝市。名阪国道を使って大阪方面に向かう途中、通り過ぎたことはあるので地名に見覚えはあるが来るのは初めて。この市も大和高田市と同じく大阪圏のベッドタウンとして近年まで人口が増加していた。国道は近鉄大阪線に沿って、のどかな郊外から市街地に伸びていく。また香芝市の周辺には北に位置する法隆寺で有名な斑鳩町など、面積がそれほど大きくない町がいくつも連なっているのが面白い。
よく自分の住む地域のことを「なにもない」と評する人がいる。しかし、それは真っ赤な嘘である。私は「まず、あなたがいるじゃないですか」と心の中でつぶやく。そして、その人だけではなく、その家族や友人知人など沢山の人が暮らしている。誰一人として同じ人はこの世にいないし、そこに地域性や受け継がれてきた歴史というエッセンスが加われば、唯一無二のきらめきを放つようになる。有名な観光資源だけが地域の魅力ではないのだ。むしろ、それは訪れるきっかけに過ぎない。私には県内外に友人がいるが、例えば東京の板橋区であればA君、京都の東山区であればB君、静岡の三島市であればC君といった具合に、まず人の顔が浮かび、次いで彼らが暮らす町並みが浮かぶ。それは友人の地元の観光地よりも、友人宅の近所の景色や行きつけの食堂だったりと、言うなれば「取るに足らない」ものばかりである。それこそが街の根源的な魅力なのであり、それはありとあらゆる場所に存在する。「なにもない」というのが真っ赤な嘘と断じた根拠はこれに尽きる。
もちろん、いくら街の魅力の源泉が人といっても、未知の街を訪れた時、誰彼構わず話しかけるわけにもいかないので、町並みを愛でながら、そこで暮らす人たちの営みに思いを巡らせるのはこれまでもお話した通り。香芝市内の国道沿いには、見知ったチェーン店を始め、飲食店や美容室などの店舗が多く並んでいる。それなりの人口を抱える地方都市らしい風景という表現が分かりやすいかもしれない。
香芝市に入った頃から雨足が強くなっている。横着者の私は雨具など持ち合わせていないので、フードを目深にかぶり、間に合わせの雨対策を行う。初冬とはいえ、歩くと汗ばむこともあるので、通気性の良い上着を選んだことが災いする。生地を貫いた雨粒が肌に達し、少しずつ体温が奪われる。午前中からの疲れもあるので、想像以上に足が重くなってきたため、近鉄下田駅前の公園のベンチで雨宿りをしながら小休憩を取る。人が行き交う駅は人間観察にはうってつけの場所。駅に向かって傘をさしながら仲良く歩く若い母親と幼児。自転車をこぐ20歳前後の学生風の男性。それぞれにバックボーンがあり、現在進行形で人生というシナリオが展開している。そんな無数の主人公たちが描く軌跡が交差して、街という巨大なドラマが構成されていく。当然、そのドラマは街の数だけある。
しばし、時を忘れ、初めて訪れる街を五感で楽しんでいると疲れと共に雨足も和らぐ。私はベンチから立ち上がるとスマートフォンで時刻を確認。「14時過ぎか。予定通り日没までに、今日の目標である大阪府には入れそうだな」と高をくくると、再び国道を歩き始める。(本紙報道部長・麻生純矢)
2022年2月10日 AM 4:55
コロナ禍の昨年は、これまで民間救急として搬送していた形態が大きく変わっていく日常だった。遠距離などは出発前にPCR検査や、感染を防ぐ防護服、医療消毒器材などを積載し、換気のうえ安全に患者を搬送。県北勢部の病院移転に伴う入院患者の搬送案件も、感染防止対策の上、各方面との連携の強化など大きな経験となった。今年再び感染力が増してきた新型コロナウイルスも、突発の依頼にどう対応するか。車を出すタイミングは、もはや救急車と同じ要領で考えなければならない。
それでも、日常的に心に響く搬送がある。転院先や自宅へ送ったあと、患者の体調が回復して、今後もぜひ利用していただく機会があればよいといつも思うが、その通り再び縁をいただいた。 寝たきりの患者を7時間を要して、医療処置の継続をしながら、ストレッチャーで関東から三重県内の病院へ転院搬送したことがあった。その女性が車イスに座れるほど病状が回復して退院となり、実家へ一時帰宅するというので、この人と再会することになった。
看護師が添乗して緊張した搬送が続いた当時を思い出した。年齢が比較的若いこともあり、医療と看護も功を奏して、車イスに座れるほど体調がよくなったようだ。搬送した当時の症状からみて、座位がとれるまでになろうとは思わなかった。
今回、自宅まで1時間半かかる距離にもかかわらず、在宅での看護と療養を決断したという。身体の回復力は無限に大きいと改めて実感する。まだ体に後遺症が残るものの、リハビリも頑張っていくようだ。「縁を結んでいただくとは、ここにもあるのか」と改めて思った。
入院中は心身の負担も並大抵でなかったと思う。長期間世話になった病院を後にして家族の介抱を受けつつ、道中で見る久しぶりの景色は嬉しかったに違いない。車中では、家族と久しぶりに会話もしている。
目的地に着いたところ、自らタオルで顔を拭うまでの体力になっていた。嬉し涙なのか、闘病疲れからなのかわからないが、手足も自分で動かそうと努力する姿に驚いた。前回の搬送時には考えられない光景で、私も嬉しさがこみ上げる。
無事に搬送し終え、家のベッドに乗り換えたとき、家族皆で帰宅を喜んだ。この仕事は人生の助っ人。「縁」をつくっていただいたことに感謝し、患者の一層の回復を祈った。
医療現場と患者、民間救急がひとつになれば、困難と思える自宅への搬送なども可能になる。世の中の変化で、今後はどのように搬送に影響が出るのか一抹の不安も抱えるが、困った人を支えていくのは民間救急の役目である。今年も目標を掲げて、感染なきように注意を払いながら、搬送に努力していきたい。
(民間救急はあと福祉タクシー代表)
2022年2月10日 AM 4:55
津市江戸橋2丁目に高齢者・障がい者向け訪問歯科「ナカハマデンタル」(中浜彩院長)の新拠点が4月に開設される。
訪問歯科診療とは、高齢者・障がい者など通院が困難な人が施設や自宅で受ける歯科診療のこと。具体的には、入れ歯の作成・修理、虫歯治療、抜歯・歯周治療、クリーニング、口腔ケア・摂食嚥下障害の診断・嚥下障害のリハビリなど。小型のレントゲン装置やポータブル診療ユニットを使い、歯科医院で行うほとんどの治療が可能。生活や介護の状況も理解しながら各々の患者の状況に合わせた治療を提案する。
また、診療の基本的な考え方はスウェーデン式予防歯科に基づく。簡単に言うと「歯が悪くなる前に治療する」というもの。同医院は、まだ一般社会に浸透していない訪問診療に特化しているのが大きな特徴。
現在の拠点は津市久居野村町にある「久居ステーション」で、エリアは半径16㎞以内(津市・松阪市北部)。訪問診療はカジュアル感のあるデニム素材の制服を身にまとった4名の女性医師を含む女性スタッフ(歯科衛生士7名、看護師1名)がチームを作り海外のタクシーをイメージした黄色い専用車両で向かう。「歯科治療が苦手な患者さんでも、緊張をほぐし、和やかな雰囲気で診療を進めています」と話す。
今回、江戸橋に開設する「津ステーション」は対象エリアを拡大するのが目的ではなく、需要が高まる従来のエリア内で、より迅速で効率的な訪問診療を実現するためのもの。開設に伴いオープニングスタッフも募集している(歯科衛生士1名、パート2~3名)ので、有資格者を含め、子育てや家事などで忙しい女性でも空いた時間などを有効活用してみては。
問い合わせは☎059・255・0620。診療時間は月~金9時~17時半、休診日は土・日・祝。
2022年2月10日 AM 4:55