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1993年に創設された技能実習制度は、発展途上国の外国人が日本で働きながら技術を学び、帰国後に母国の発展に生かしてもらうことが建前だ。実習期間は最長5年で、今年3月末の時点では農漁業、縫製業、建設業、宿泊業など87職種が対象である。この技能実習制度のあり方を検討する政府の有識者会議が4月10日、日本の法務省内で開催された。
会議では、「国際貢献に大きな役割を果たしている」「中小企業にとって受け入れは必須だ」などの意見に対し、「目的と実態のかい離は明らかで、人権侵害につながる構造的な要因だ」「外国人労働力を安く使うという考えでは人材獲得の国際競争に勝てない」「労働力として正面から認め、長く日本で生活者として暮らせる仕組みを考えるべきだ」「実態に合わせて廃止した上で、国内産業の人材確保の制度として再出発することが必要だ」などの意見が交わされ、現行制度の廃止を検討するよう中間報告書の原案が提示された。
有識者会議は、今秋をめどに最終報告書をまとめ、日本政府は早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針である。宿泊業界もそうだが、労働力不足は深刻だ。少子高齢化で人手不足が深刻化し、外国人の実習生が労働力の貴重な担い手となっている実態に合わせる必要がある。
折しも4月12日、日本の総務省は2022年10月1日時点の日本の総人口推計(外国人含む)を発表した。総人口は前年比55万6000人減の1億2494万7000人となり、12年連続で減少。出生児数が死亡者数を下回る「自然減」は16年連続となり、前年比で73万1000人減った。国立社会保障・人口問題研究所では、2100年には約6400万人にまで減少すると予測している。現在、日本政府は「異次元の人口増加政策」の財源をめぐって混迷しているようだが、社会保障や増税で可処分所得を減らす愚策を執れば本末転倒の結果になるだろう。では、どうするか?
2014年2月、安倍元首相がソチ冬季五輪開会式出席のためソチを訪れた時、プーチン大統領は昼食会で日本の人口減少に触れ、ロシアにおける「母親資本制度」の取り組みを説明した。母親にインセンティブを与えるこの人口増加政策については、2018年5月31日付本紙上あるいはWEB版の№125でも紹介したが、私はこの制度が人口の増加や若返りが社会保障の健全化や内需拡大のみならず、国防面においても有効であることに戦慄した。というのも、ロシアでこの制度がスタートした2007年生まれの子供たちが、あと2年でこの国の兵役に適う18歳に達するからである。我が国の戦時中においても「生めよ殖やせよ」スローガンがあったが、労働生産人口が国力を担保することは間違いない(もっとも、ロシアの国防相は昨年、ロシア軍の徴兵年齢を3年引き上げる考えを示した。が、それは現行法では学徒は徴兵が猶予されるからであって、21歳からのほうが兵役に就けやすく、将来的な軍隊の人員拡大につながるからである)。
つまり、人口政策は国防と同格であり、だったら財源については言うまでもなく「国債」なのである。しかもそれは、コロナワクチンや防衛装備などといった買ったら終わりの「エンドユース」ではなく、生涯賃金相当額で国内消費を起爆する投資的役割を果たす。この投資は社会全体で回収されうるものだ。
(OHMSS《大宇陀・東紀州・松阪圏・サイト・シーイング・サポート代表》)
2023年5月11日 AM 4:55
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