「ウミガメが産卵しやすい浜辺を取り戻そう!」。ウミガメの保護活動に取り組むボランティア団体「ウミガメネットワーク三重」=米川弥寿代 代表=は、環境の変化で大きな石が目立つようになってしまった津市内の海岸清掃への協力を呼び掛けている。貸出用の掃除道具箱を設置するなど、少人数で楽しめて好きな時間に気軽に参加できるように工夫し、環境保全活動の裾野を広げる工夫も凝らしている。

阿漕浦海岸でソリに石を集める米川さん

 津市の阿漕浦海岸=津市津興=は、三重県内でも特にアカウミガメの産卵が多い場所として知られている。その理由として、ウミガメが産卵しやすいきめ細やかな砂浜が広がっていることにある。しかし、近年では、周辺の海岸一帯で進められている堤防工事の影響とみられるコンクリート片や大きな石が目立つようになってしまった。
 石が増えるとウミガメが産卵しても、砂が乾きやすくなり、卵がふ化できない確率が上がってしまう。沿岸部の防災には欠かせない堤防だが、その裏で乗り越えていくべき課題が浮上している形といえる。
 2014年に設立され、ウミガメの保護活動に取り組んでいる「ウミガメネットワーク三重」。代表の米川さんは、日々鈴鹿市から津市香良洲町の海岸を回り、ウミガメの上陸や産卵後の卵を見守りながら海岸清掃に取り組んでいる。阿漕浦海岸でも、ボランティアを募って上陸を阻む原因となり得る流木の除去などの清掃活動も行ってきた。しかし、海岸に無数に落ちている石を回収するには、自分たちの力やイベント的な清掃活動だけでは限界があり、より多くの人が日常的に海岸清掃に関わり易い仕組みづくりが出来ないかと考えてきた。
 そこで、特に石が多い同海岸と松本崎海岸=津市島崎町=、中河原海岸=津市高洲町=などに貸し出し用の掃除道具を入れた木箱を設置。好きな時間にひとりや、家族や友人同士など少人数でも手ぶら(ゴミ袋等も提供)で気軽に清掃に取り組める。集めたゴミや石も所定の場所に置いておけば回収してもらえる。回収したゴミや石を乗せるソリの貸出も行い、親子でゲーム感覚で楽しみながら清掃できるようにと工夫も凝らされている。

燃やされた掃除道具入れ


 しかし、6月中旬に阿漕海岸に降りる階段付近に掃除道具入れを設置したところ、心無い人によって箱が燃やされてしまう悲しいアクシデントが発生。津警察署に被害届を出し、新しい掃除箱を設置したが、米川さんは強く非難せず「きっと私たちの活動を知らなかっただけ」と話し、「多くの皆さんにお手伝いして頂ければ嬉しい」と協力を呼びかける。
 ウミガメが産卵しに来る砂浜は津市の財産。一人でも多くの市民が無理のない範囲で海岸清掃に関わっていくことが持続可能な環境保全活動にもつながっていく。
 この清掃活動の期間は来年4月末まで。参加希望や問い合わせは米川さん☎090・5600・0221へ。またはEメールumigamenetmie@gmail.comへ。