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森林は、防災機能、水源涵養、景観形成、地球温暖化防止など多面的な役割を果たすが、木材価格低迷で、資産価値を失い荒廃が問題化。森林経営管理制度は、林業の成長産業化と森林資源の適正管理が目的だが、森林所在地の市町村と森林所有者の責務が明確化されているのが特徴。
津市は市域の面積7万1119㏊の約6割に当たる4万1533㏊の広大な森林を有し、うち3万3551㏊が民有の人工林。その大部分の約2万5000㏊で適切な管理が行われていない。
同制度に即した事業を市町村が行う原資に当てられるのが国の「森林環境譲与税」。令和元年度から段階的に譲与が始まり、市町村に私有林人工林面積、人口、林業就業者数に応じた金額が分配され、森林整備、木材利用、人材育成と普及啓発で必要な事業を行っている。しかし、市町村間で取り組みに大きな差があり、有効な施策が展開できずに多額の余剰金を毎年基金として積み立て続ける市町村もある。
津市では制度開始時から積極的に事業を展開。令和3年度に譲与された税の活用割合(譲与総額から基金として積み立てた額を除いた事業費の割合)は87・1%で県内の市町平均52・7%を大きく上回っている。
これまで津市が主に取り組んできたのが、森林の適切な経営管理に取り組む前段階である森林所有者対象の「経営意向調査」。森林を自己管理するのか、市に管理委託を希望するのかを確認する。現在までに芸濃、美杉、白山、一志、美里、久居地域の森林所有者2万2101名(10万1244筆)に調査票を発送し、市内の民有林の92%に当たる3万7651㏊で調査を実施。令和3年度までの調査面積は全国の市町村で第2位となっている。津、安濃、河芸地域の森林所有者への調査票の郵送は今月完了。これで全ての地域での意向調査が実施される。
昨年度までの調査で、回答があったのが54%(1万1885名、6万9093筆)で、その約7割が市への管理委託を希望。一方、未回答が31%あるのが課題。
意向調査の次段階で回答を得られた森林の木の生育状況や密度などの森林現況調査を行った上で、隣接地の所有者全てが立ち合いし、境界の明確化を行う。現在までに芸濃町河内と美杉町八知の計434㏊が完了。
その次段階で林業経営に適さない森林は、15年の管理契約を結び、その間に市が1回間伐を行う。現在までに芸濃町河内と美杉町八知で約196㏊を間伐。一方、林業経営に適する森林については県内初の林業経営体への再委託行っている。
津市が有効な施策を打てたのは、意向調査や境界の明確化などを請け負う中勢森林組合の存在も大きい。来年度からは満額の毎年1億7000万円が譲与され、境界の明確化にもより力を入れていくこととなる。
適切な管理に不安を抱える森林所有者も多いが津市の積極的な姿勢に信頼を寄せる声も増えたが、意向調査や境界の明確化の進捗に、市民の協力が欠かせない。
制度の問い合わせは津市林業振興室☎059・262・7025。
2023年8月24日 AM 5:00
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