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相続した不要な土地を国へと引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が4月から始まっている。空き家・空き地問題が深刻化する中で、制度への期待が高く津地方法務局にも計300件近くの相談が寄せられる一方、制度を利用するためには土地を更地にするといった諸条件があり、金銭的な負担も発生するなど留意点も少なくない。
近年、空き家・空き地が引き起こす様々な問題で全国の自治体が対応に追われている。背景に土地の所有に負担を感じる人の増加があることから、国を挙げての対策の一つとして始まったのが「相続土地国庫帰属制度」。相続した不要な宅地、農地、森林等を国庫に納めることができる。
ただし、同制度は国庫に納められた土地を管理する国の負担が増え過ぎることを防ぐため、誰でも無条件に利用できるわけではない。申請が行えるのは、相続や遺言で土地を取得した相続人だけで、自分で取得した土地や生前贈与を受けた土地は対象外となっている。
申請の段階で、却下となる土地は、①建物のある土地(更地にしないといけない)②担保や使用収益権が設定されている土地③通路や墓地など他人の使用が予想される土地④土壌汚染されてる土地⑤境界が不明な土地や所有権などで争いがある土地。
申請を出せるものの、審査段階で不承認となる土地は、①崖があり、管理に労力を要する土地②放置車両や廃屋などがある土地③産業廃棄物、古い水道管など除去しなければ管理や処分が難しい土地④他の土地に囲まれて公道に通じていない土地⑤通常の管理や処分に過分の費用や労力を要する土地(災害の危険性、間伐など適切な管理がされていない森林、土地改良区に水利施設の建設費用などを払っている場合など)。
これら条件を満たしたとしても、申請のハードルとなるのが費用面の負担だ。宅地の場合は前述の通り、家屋などの建物を解体したり、家財道具などを処分して更地にする費用が必要。更に申請には手数料として一筆あたり1万4000円も必要。申請が承認されると、10年分の土地管理費に当たる負担金を納付しなければならない。負担金は森林を除いた宅地、農地、雑種地は面積を問わず原則20万円。しかし、都市計画法の市街化区域内などの場合や森林は面積に応じて負担金が算出される。これらを合わせると数百万円に及ぶケースも考えられる。
制度利用の流れを説明すると、①電話やインターネットなどで予約して法務局に事前相談を行う②申請書の作成・提出③要件審査(津法務局管内では審査に8カ月の時間が必要)④承認・負担金の納付⑤国庫帰属。
ここまでの説明で決して万能の制度ではないことがわかるが、資産価値が低く、売買や利活用が難しい土地を処分する手段が増えたことは間違いない。来年から土地の相続登記が義務化されることもあり、自分が相続しそうな管理の難しい土地は、宅地であれば、売却や空き家情報バンクへの登録、農地であれば、農地中間管理機構、森林であれば森林経営管理制度、はたまた相続放棄…といった具合に将来に備えて、予めどのような管理や処分の方法があるかを知っておくことも重要となる。その中の一つの選択肢として、この制度が増えたと捉えるのが最も妥当といえるだろう。
制度に対する相談受付が始まった2月から現在まで、津地方法務局には280件あまりの相談が県内外から寄せられており、主に制度の内容についての質問が多いという。
同法務局では「制度の利用を考える人は、まずは気軽に相談してほしい」と話している。
相続した土地が申請の条件を満たすかなどの相談は予約制で一回30分。電話かネットより受付。土地の状態がわかる資料を用意すると的確なアドバイスが受けられる。
問い合わせや相談の予約は☎059・228・4527もしくは同法務局のHPより。
2023年8月10日 AM 5:00
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