2023年8月

 

三重県立美術館で9月24日㈰まで、企画展「日根野作三展」が開かれている。
 日根野(1907~1984)は、三重県伊賀市に生まれ、東京高等工芸学校に学んだ後、山茶(つばき)窯、国立陶磁器試験所でデザイナーとしての才能を開花させた。戦後に独立すると、伊賀を拠点に、愛知、岐阜、三重、滋賀などの陶業地を巡り、デザインの指導と普及に努める。ものづくりの機械化、量産化が進む戦後の時代に日根野が力を入れたのは、手作りを主とした、近代的な感覚を持つ生活用具「クラフト」。作り手が得意とする技術や個性、地域それぞれの多様性を活かした人間味あるデザインを説いている。
 今展は、各地に残される作品資料約180点から日根野の生涯をたどる過去最大規模の回顧展。今もなお色あせない日根野作三のデザインの魅力が楽しめる。
 観覧料は一般1000円、学生800円、高校生以下無料。開館は9時半~17時(入館は16時半まで)、休館日は、月曜(9月18日は開館)、9月19日㈫。問い合わせは同美術館☎059・227・2100へ。

 八月も半ばを過ぎましたが、灼熱の空気と強烈な日差しが続き、連日、熱中症警戒を知らせております。
 七月には、毎年聞くひぐらしの声が少なく感じましたが、今は夏本番らしくセミが鳴いております。それでも夏が来ると、道すがら毎年楽しみにしているネムの大木が、今年も淡紅の刷毛のような美しい花を咲かせ、また、百日紅のピンクや白の花が房のように垂れ下がり、炎天夏で咲き誇るその姿に、私達は力をもらっているような気がします。
 久しぶりに花火が夜空を彩り、楽しい夏祭りの季節を迎えております。 今回は、紫式部が書いた源氏物語から、謡曲「葵の上」より取り入れた「三つの車」と、夏らしく風鈴の音やほうずき売りを題材にした「別世界」という小唄二題をご紹介いたします。
 
 三つの車  
 作詞・益田太郎冠者 
 作曲(初代)平岡吟  舟 
 明治35年の唄です。

三つの車に法の道 火宅の門や出でぬらん そ~ら出た 生霊なんぞおおこわや 身のうきに 人の怨みはなんのその
私の思いはこわいぞえ なぞの御息所は 乙つうすまして お能がかりで おっしゃいましたとさ「のうまくさんまんだ ばさらんだァ」でェやんれ身をこがしたとさ 悋気と浮気は罪なもの

 この小唄の「三つの車」というのは、仏教の言葉で迷いに満ちたこの世から衆生を救い出す教えを車にかえたものです。
 出だしは源氏物語を題材に謡曲「葵の上」の一声を取り入れ謡がかりで、重々しく凄みをもたせて、「三つの車に法の道…」と出て「そうら出た生霊なんぞおおこわや」と経妙にくだけてゆく面白さが聞き所です。
 光源氏は葵の上という本妻がありながら、源氏は、六条の御息所と通じ逢い、加茂祭で両女の車が行き会って、車争いになります。
 負けた御息所が、うらみを持って死んだ人の霊、生霊となって「葵の上」を悩ますという小唄になっています。
 謡曲「葵の上」から河東節や富本節、清元、長唄などを取り入れ、この小唄は謡曲の中の謡曲と言われております。悋気と浮気は罪なものと、この世の生き方を唄っております。

 別世界(丹波ほうずき)  作詞・英十三
 作曲・吉田草紙庵
 昭和15年の唄です。

丹波ほうずき 長刀ほうずき 梅ほうずき 昼寝の耳に夢うつつ 葭戸に透いた秋草の 影絵の様な一と昔 悲しいことや辛いこと 思い叶って「別世界」軒の荵の風鈴も 情が移って鳴り交わす 

 別世界とは、妾宅のことを言っています。大正の中頃、ほうずき売りの声で昼寝からさめた女が、苦しかったこと、悲しかったつらい過去を思い出し、日陰の身として、人に冷たい眼で見られる境遇であっても、思いがかなって、この方が身軽で気骨が折れず、気疲れせず、男性への愛が深まりますと唄っています。
 この小唄は、作詞者、英が同名の「別世界」という地唄から想いを得て作詞したものです。
 この曲の三味線の送り(小唄の最後、三味線だけの音曲を付けること)は風鈴が風に吹かれて、急に鳴り出したかと思うと静かになるという手付がついていて、面白く見事なものです。
 夏本番、くれぐれも体調を崩さないよう気を付けてお過ごし下さい。
 小唄 土筆流家元
 参考・木村菊太郎著「江戸小唄」
 三味線や小唄に興味にある方、お聴きになりたい方、楽しい教室です。お気軽にご連絡下さい。また、中日文化センターで講師も務めております。稽古場は「料亭ヤマニ」になっております。 電話059・228・3590。

 津市内の経営者などでつくる任意団体「丸之内倶楽部」(志田行弘代表幹事)は先月、陸上自衛隊久居駐屯地を訪れ、施設内を視察すると共に、金子洋幸司令から安全保障のあり方や同駐屯地の歴史、世界情勢などの説明を受けた。
 同倶楽部は隔月開催で毎回、様々な分野の専門家をゲストに招き講話を聴いている。今回の視察は、津市内にありながらも一般には知られていない久居駐屯地の施設内部を詳しく知り、地域との関わりを考えるきっかけにするのが目的。15名の会員が参加した。
 金子司令は、「久居駐屯地は、旧軍の頃よりこの地に所在し、また駐屯地の中核部隊で旧軍と同一連隊番号を継承する第33普通科連隊を有する駐屯地であり、100年以上の歴史と伝統を持った三重県の郷土部隊。近年、我が国の安全保障環境は厳しさを増しており、また、地震・台風等の自然災害も強く懸念されています。三重県においても東南海・南海トラフ地震への脅威が強く懸念されており、第33普通科連隊を核心として久居駐屯地所在部隊は、県や市町村等の自治体や警察・消防等と連携して常に災害への脅威に備えるための準備や訓練等を行っています」と話した。
 その後は、広報館や資料館を見学し、同駐屯地の歴史を学んだ後、隊員から災害時の救援活動に使う装備の実演や、装甲車の説明を受けた。

[ 5 / 9 ページ ]« First...34567...Last »