まな板の上の水菜を切りながら思い出した。関東出身の息子のお嫁さんに「水菜とお揚げさんの炊いたん」の小鉢を出した時のこと。「タイタン!」と反応したので、「アニメのキャラか土星の衛星みたいやなあ」と返して笑った。
 私は煮物を「炊いたん」と言うことがある。肉じゃがは「肉じゃが」と言うが、里芋は「里芋の炊いたん」、豆は「お豆さんの炊いたん」と京都のおばんざい風の表現をする。
 三重弁には京都言葉が入っているように思う。「言わへん」「そや」と使っているけれど、こういうのは京都風らしい。大阪では「言えへん」「せや」と言うみたい。きっと東海道の鈴鹿峠を越えて京都からの旅人が伝えた表現だろう。
 三重県はいくつもの峠で関西とつながっている。渡るに渡れない木曾三川や伊勢湾がある東側より、西側との交流が多かったと思う。だから言葉も生活習慣も関西風。三重弁も関西弁に分類されるだろう。
 私は方言を気にしたことがない。どこにいても普通にしゃべっている。三重弁は温かくて好きだ。「ささって」だの「とごる」だの「つんどる」だの、他の地域では通じない言葉もあるだろうが、それも話題の一つになる。
 きょうの水菜も「水菜とお揚げさんの炊いたん」になった。「水菜と油揚げの煮物」より美味しそうに聞こえると思う。  (舞)