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高齢者の重要な交通手段の一つとなっているコミュニティバスだが、停留所までの距離や効率的な運営が難しいなど、使い勝手や運営上の課題を抱えているため、津市では利用者のニーズに合わせたより柔軟な運行が可能となる「デマンド型交通」の導入を目指す。令和8年度からの運行開始に向けて、来年1月から検討を始めていき、津市の実情により即した形へと再編していく。
デマント型交通の導入については、現在開会中の津市議会の令和5年第4回定例会で、吉田博康議員=津みらい=の一般質問の中で市当局からの答弁があった。
現在、市内では公共交通機関の隙間を補うために市内8地域19ルートでコミュニティバスが運営されている。年間約6万8000人が利用しており、そのうち66・5%は外出支援事業として65歳以上の高齢者にバス運賃に利用できるポイントが付与されるシルバーエミカを利用。高齢者が普段の足として活用していることが数字でも裏付けられている。
停留所の設置個所や運行ルートなどは、地域公共交通活性化協議会や、各地域の公共交通あり方検討会で定期的に見直して利便性の向上を図ってきた。
しかし、利用者が減る夕方などには路線によっては利用者がゼロになることもあり、また、高齢者からは「自宅から停留所の距離が遠い」という声も出ていることから、より柔軟に対応できる「デマンド型交通」を令和8年度から開始するために来年1月下旬以降に開催予定の地域交通あり方検討会などで導入に向けた検討を始める。
ただし、一口にデマンド型交通といっても非常に多様な形態がある。一例を紹介すると、
①定路線型…一般的なバスのように所定のバス停で乗降するが、予約が入った時のみ運行。
②迂回ルート・エリア デマンド型…①をベースに予約に応じて所定のバス停まで遠い地域にも迂回する。
③自由経路ミーティング ポイント型…運行ルートは設けず、予約に応じてバス停の間を最短で結ぶ、などがある。
更にダイヤの設定の有無、使用する車両、予約の方法なども導入している自治体がそれぞれの事情に合わせて最適の形を模索している。
津市が現時点で想定している運行形式は、できるだけ細かく各地域に停留所を設置。予約に応じて予め設定しているダイヤに従って運行していくという形。商業施設、医療施設へ向かったり、一般のバス路線への乗り継ぎを想定している。
また、現状ではコミュニティバスが走っていない旧津市と香良洲地域の声を受け、1㎞圏内にバス停や鉄道駅が存在しない地域でも、デマンド型交通の導入を検討していく。
前葉泰幸市長も先述の一般質問の答弁で「市民の皆さまのお役に立てる公共交通のあり方を検討していく」と限られた財源を上手く活用しながら利便性の向上を図っていく意向を示した。
デマンド型交通については、全国各地で様々な形で導入されているが、地域の事情は千差万別で、成功例をそのままモデルにしても失敗することは珍しくない。
失敗例を挙げると、利用を事前登録制にしことで予約が煩雑化したり、利用できる層を市内在住者や高齢者に限定した結果、利用者が減少してしまった、というケースがある。また、導入に向けては路線バスやタクシーなどの民業を圧迫しないよう交通事業者との繊細な調整も必要となる。
今後ますます高齢化が進行していくだけに、高齢者の安全かつ利便性の高い外出支援施策は重要性を増すばかりだが、広大な市域を持つ津市だけに、各地域によって異なる状況や移動に対するニーズを汲み取り、丁寧な議論を重ねながら、最適の形を模索していくことが求められる。
2023年12月15日 PM 12:00
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